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第9章 貨物保険と貿易保険 ・ レッスン9-5

PL保険。輸出製品の事故への備え

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-04

前回の復習(1分)

本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。

レッスン9-4から

Q1. 貿易保険の「非常危険」に当たるものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 輸入国が外貨の送金を規制し、代金が送られてこない
外貨送金規制は、当事者に責任のない不可抗力的な事由なので非常危険です。3か月以上の不払いや破産は、信用危険に当たります。

レッスン9-2から

Q2. ICC(B)では補償され、ICC(C)では補償されない事故はどれですか。

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正解: 3. 地震・噴火・雷
火災・爆発や、船の座礁・沈没は(C)でも補償されます。地震・噴火・雷は、(B)が(C)に加えている事故の一つです。

このレッスンの学習目標

要点

  1. 製造物責任(PL)とは、製品の欠陥によって人の生命・身体・財産に被害が出たとき、製造業者等が負う損害賠償の責任のことです。
  2. 日本の製造物責任法では、被害者は製造業者の過失ではなく、製品の欠陥を立証すればよいとされています。輸入した者も製造業者等に含まれます。
  3. 米国の製造物責任は州法によるもので、厳格責任や懲罰的損害賠償、陪審裁判などがあり、賠償額や訴訟費用が大きくなりがちです。
  4. 一般的なPL保険(生産物賠償責任保険)は日本国内で起きた事故が対象です。輸出製品の事故には、海外PL保険で備えます。
  5. 保険に加えて、製品安全の体制、警告表示と分かりやすい取扱説明書、販売契約の補償条項などでリスクを減らします。

01製造物責任(PL)とは。欠陥があれば賠償責任を負う

製造物責任(PL:Product Liability)とは、製品の欠陥で人の生命・身体・財産に被害が出たとき、製造業者等が負う損害賠償責任です。日本では製造物責任法(PL法)が定めています。

このレッスンでは、日本のキッチン用品メーカーD社が、電気ケトルを米国に輸出する例で考えます。もし製品の不具合で現地の利用者がやけどをしたら、D社は賠償を求められるかもしれません。

日本の製造物責任法は、製造物を「製造又は加工された動産」と定めています。欠陥とは、その製造物が通常有すべき安全性を欠いていることです。製造業者等には、製造した者のほか、輸入した者や自社名を表示した者も含まれます。

消費者庁の解説によると、民法の不法行為では被害者が相手の過失を立証する必要があります。製造物責任では、過失ではなく製品の欠陥を立証すればよいとされています。欠陥は、製造上・設計上・指示や警告上の3つに分けて説明されます。

02輸出先で訴えられるリスク。米国の例

輸出した製品で事故が起きると、輸出先の法律や裁判で責任を問われます。ジェトロは、米国のPL訴訟は賠償額が莫大になりがちで、企業経営に大きな影響を及ぼすと説明しています。

ジェトロによると、米国の製造物責任は連邦法ではなく州法によるもので、州ごとに違いがあります。日本法と比べて特徴的なのが厳格責任(Strict Liability)です。製品に欠陥があれば、製造業者の過失の有無を問わず責任が生じます。

訴えられる範囲は州によって異なりますが、製造業者だけでなく輸出業者・商社、販売業者、部品メーカーも含まれる可能性があります。契約で免責の条項を入れていても、被害者からの訴えは避けられません。

米国の訴訟には、陪審裁判や集団訴訟(クラスアクション)があります。実際の損害を大きく超える懲罰的損害賠償(Punitive Damages)が認められることもあります。広い証拠開示の制度もあり、訴訟対応の費用と手間は非常に大きくなるとされています。

03国内のPL保険と海外PL保険。対象地域が違う

一般的なPL保険(生産物賠償責任保険)は、日本国内で生じた事故が対象です。輸出製品が海外で起こした事故に備えるには、海外を対象とする海外PL保険を別に手配します。

PL保険は、製造・販売した製品や行った仕事の結果が原因で、法律上の損害賠償責任を負ったときの損害を補う保険です。消費者庁の資料では、日本国内で生じた対人・対物事故が対象と説明されています。支払われるものには、損害賠償金のほか争訟費用などがあります。

そのためD社が国内向けのPL保険にだけ入っていても、米国で起きたやけど事故には備えられません。ジェトロは米国向けについて、PL訴訟に経験の深い米国保険会社と提携している日本の損保会社に付保する方法などを挙げています。米国向けは他国向けより保険料が高額になるとも説明しています。

保険を掛けていても、手続きを誤ると使えないことがあります。ジェトロは、米国の裁判所から訴状が届いたら直ちに保険会社に示すよう勧めています。通知が遅れると、保険での対応を断られるリスクがあるためです。

04中小企業海外PL保険制度。商工会議所の団体保険

中小企業海外PL保険制度は、日本商工会議所が扱う会員中小事業者向けの団体保険です。輸出製品が原因の身体事故・財物事故で法律上の賠償責任を負ったときの損害を補います。

この制度は、日本商工会議所が包括加入者となって損害保険会社と契約する団体保険で、商工会議所の会員しか加入できません。保険の適用地域は日本を除く全世界で、損害賠償金のほか争訟費用も対象とされています。

取引先を通じて間接的に輸出された製品や、外国人旅行者が国外に持ち出した製品による事故も対象とされています。訴訟になったときは、引受保険会社が弁護士の選定や示談代行などで解決まで支援すると案内されています。

補償内容や保険料は引受保険会社や契約によって異なるため、加入を考えるときはパンフレットや重要事項説明書で確認します。なお、国内向けの中小企業PL保険制度は2020年6月に終了し、ビジネス総合保険制度に一本化されています。

05保険以外の備え。安全対策・表示・契約

PL保険は事故後の損害を補うものです。事故そのものを防ぎ、責任を問われにくくするため、製品安全の体制づくり、警告表示と取扱説明書、販売契約の条項を組み合わせて備えます。

ジェトロは、製品安全の方針と品質管理の体制を整え、設計・製造・警告表示で最善を尽くしている記録を残すよう勧めています。販売後に不具合が見つかったときに、警告やリコール(無償回収・修理)を素早く行える体制も重要です。

警告表示と分かりやすい取扱説明書も欠かせません。安全な使い方や危険性の警告を文書で伝えていない製品は、指示・警告上の欠陥と判断されるおそれがあるためです。

販売契約に、買主が売主を補償する条項や保証を限定する条項を入れる方法もあります。ただしジェトロによると、これらは売主と買主の間では有効でも、被害者には対抗できません。一般取引条件はレッスン3-4で学びました。貨物の保険はレッスン9-1〜9-3、代金回収の備えはレッスン9-4で学びます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。

製造物責任(PL)Product Liability

製品の欠陥によって人の生命・身体・財産に被害が出たとき、製造業者等が負う損害賠償責任。

製造物責任法(PL法)Product Liability Act (Japan)

1994年制定の日本の法律。製造物の欠陥による被害について、製造業者等の損害賠償責任を定める。

欠陥Defect

製造物が通常有すべき安全性を欠いていること。製造上・設計上・指示や警告上の欠陥に分けて説明される。

厳格責任Strict Liability

米国の製造物責任の訴訟原因の1つ。製品に欠陥があれば、製造業者の過失の有無を問わず責任が生じる。

懲罰的損害賠償Punitive Damages

加害者の悪質さなどを踏まえ、実際の損害を超えて認められる賠償。米国では認められうるが、日本の法制度にはない。

生産物賠償責任保険(PL保険)Products Liability Insurance

製造・販売した製品や行った仕事の結果が原因で、法律上の損害賠償責任を負ったときの損害を補う保険。一般的には日本国内の事故が対象。

海外PL保険Overseas Products Liability Insurance

輸出製品などが海外で起こした事故について、法律上の損害賠償責任を負ったときの損害を補う保険。

示談代行Claim settlement service

賠償請求を受けたとき、保険会社が被保険者に代わって相手との交渉などを行うこと。

出典

  1. e-Gov法令検索「製造物責任法」(第1条 目的、第2条 定義、第3条 製造物責任)
  2. 消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」
  3. 消費者庁「【概要】製造物責任に関する保険の実務―生産物賠償責任保険(PL保険)について―」(2025年10月ヒアリング概要)
  4. 日本損害保険協会「賠償責任のリスク」(生産物賠償責任保険)
  5. ジェトロ 貿易・投資相談Q&A「輸出時におけるPL法の対策・留意点:米国」
  6. ジェトロ 貿易・投資相談Q&A「輸入品の品質欠陥に起因する人的・財的損害が発生した際の製造物責任者」
  7. 商工会議所会員向け保険制度(日本商工会議所の経営協力による公式サイト)「中小企業海外PL保険制度」
  8. 商工会議所会員向け保険制度「中小企業PL保険制度」(2020年6月終了のお知らせ)
  9. 日本商工会議所「海外展開支援施策一覧」

LESSON 9-5 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。

Q1. 日本の製造物責任法の説明として、正しいものはどれですか。

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正解: 2. 製品を輸入した者も「製造業者等」に含まれる
製造物責任法の「製造業者等」には、製造した者のほか輸入した者も含まれます。被害者が立証するのは過失ではなく欠陥で、欠陥とは通常有すべき安全性を欠くことです。単なる品質上の不具合は当たりません。

Q2. 国内向けのPL保険だけに入っているメーカーが、米国に輸出した製品で事故を起こしました。正しい考え方はどれですか。

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正解: 3. 一般的なPL保険は日本国内の事故が対象なので、海外PL保険で備えておく必要がある
一般的なPL保険(生産物賠償責任保険)は、日本国内で生じた事故が対象です。輸出製品の海外での事故には、海外PL保険を手配して備えます。

Q3. 販売契約に入れる「買主が売主を補償する条項」について、正しいものはどれですか。

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正解: 1. 売主と買主の間では有効でも、被害者からの賠償請求を防ぐことはできない
補償条項や保証を限定する条項は、売主と買主の間の取り決めです。ジェトロは、これらは被害者に対抗できないと説明しています。そのため保険や安全対策と組み合わせて備えます。

レッスン9-5はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第9章 貨物保険と貿易保険 のレッスン一覧
  1. 9-1貨物海上保険の基礎
  2. 9-2協会貨物約款A・B・C
  3. 9-3保険金額と申込み
  4. 9-4貿易保険(NEXI)
  5. 9-5PL保険

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