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第9章 貨物保険と貿易保険 ・ レッスン9-2協会貨物約款(ICC)A・B・Cの違い
読む時間の目安: 6分 ・ 公開日 2026-10-04
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. A社がFOB条件で輸出します。A社の倉庫から本船に積み込むまでの貨物のリスクについて、正しいものはどれですか。
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正解: 3. 危険はまだA社にあるので、A社が輸出FOB保険などで備える
FOBでは、本船の船上に置くまで危険は売主にあります。買主の保険はFOB Attachment Clauseで船積み後から始まるため、売主が輸出FOB保険で備えます。
Q2. 航空輸送で信用状(L/C)決済を使うとき、貨物を銀行の管理下に置くための方法はどれですか。
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正解: 1. AWBの荷受人を、信用状の発行銀行にする
AWBは担保にならないため、荷受人を発行銀行にします。輸入者は銀行に代金を払うか担保などを出さないと、貨物を受け取れなくなります。
このレッスンの学習目標
- 協会貨物約款(ICC)とは何か、1982年版と2009年版があることを説明できる
- (A)のオールリスクと、(B)(C)の列挙責任の違いを説明できる
- どの条件でも補償されない損害と、戦争・ストライキへの備え方がわかる
要点
- 協会貨物約款(ICC)とは、ロンドンの保険市場が定めた、貨物保険の補償範囲の標準条件のことです。
- (A)は、除外された損害を除いて、偶然の事故による損害を広く補償するオールリスク型の条件です。
- (B)と(C)は、約款に名前の挙がった事故だけを補償する条件で、(B)は(C)に地震や海水の浸入などを加えたものです。
- 梱包の不十分、貨物の性質による変質、輸送の遅延などは、(A)でも補償されません。
- 戦争とストライキは3つとも対象外で、補償を望むなら協会戦争約款・協会ストライキ約款を別に付けます。
01協会貨物約款とは。ロンドン市場が作った標準の条件
協会貨物約款(ICC)とは、貨物保険で何を補償するかを決めた標準の条件です。ロンドンの保険市場が定め、世界で広く使われています。今は1982年版と2009年版が併用されています。
このレッスンでは、日本の機械メーカーA社が、海外のB社に機械を船で輸出する例で考えます。貨物に保険を掛けるとき、まず決めるのが、どんな損害を補償してもらうかという保険の条件です。
その標準が協会貨物約款(Institute Cargo Clauses、ICC)です。約款とは、契約の中身をあらかじめ決めた条文のことです。ロイズの資料は、ICCをロンドン市場が合意した標準の文言で、世界で広く使われていると説明しています。インコタームズ2020は、ICCをロイズ市場協会(LMA)と国際保険引受協会(IUA)の約款として示しています。
ICCは1982年に、わかりやすい言葉に書き直され、2009年1月1日付の版に改訂されました。ジェトロによると、2009年版は保険の始まりと終わりの時期などが、保険を掛ける側に有利になりました。両方の版が今も併用されているため、どちらの版かを保険の書類で確かめます。
02(A)はオールリスク。除外された損害以外を広く補償
(A)は、約款で除外された損害を除き、偶然の事故による貨物の損害を広く補償する条件です。3つの中で補償が最も広く、ジェトロによると、ほとんどの場合(A)で掛けられています。
(A)の条文は、「除外されたものを除き、貨物の滅失・損傷のすべての危険を補償する」という書き方です。これをオールリスク(All Risks)といいます。滅失とは貨物がなくなること、損傷とは壊れることです。
ロイズの資料によると、オールリスクでも、どんな損害でも出るわけではありません。対象は偶然の事故による損害で、必ず起きることや、保険を掛けた側が防げることは対象外です。
補償されるのは、貨物そのものの物理的な損害です。たとえば、到着が遅れてクリスマス商戦に間に合わなかったという売上の損は対象外です。一方で、損害がどう起きたかを細かく証明しなくてよい点が、(A)の大きな利点です。ジェトロは、(A)は(B)の範囲に加えて、雨や淡水による濡れ、盗難、抜き荷なども補償すると説明しています。抜き荷とは、荷物の中身の一部を抜き取られることです。
03(B)と(C)は列挙責任。名前の挙がった事故だけ
(B)と(C)は、約款に名前の挙がった事故による損害だけを補償する条件です。(C)が最も狭く、(B)はそれに地震・噴火・雷や、海水などの浸入による損害を加えたものです。
(B)と(C)のように、補償する事故を一つずつ並べる方式を列挙責任といいます。英語ではネームド・ペリル(named perils)です。ロイズの資料によると、保険料を抑えて、重大な事故だけに備えたい場合に選ばれます。
(C)が補償するのは、火災・爆発、船の座礁・沈没・転覆、陸上の輸送用具の転覆・脱線、船などの衝突、避難港での荷降ろしなどです。投げ荷も含まれます。投げ荷とは、船を守るために貨物を海に捨てることです。
(B)はこれに、地震・噴火・雷、波にさらわれること、海水・湖水・河川水が船やコンテナ、保管場所に入ることを加えます。船への積み込みや荷降ろしの最中に落ちた梱包1個ごとの全損も対象です。列挙責任では、何が起きたのかと、それが並べられた事故のどれに当たるのかを、保険を掛けた側が示す必要があります。ここが、(A)との大きな違いです。
04どの条件でも出ない損害。免責と戦争・ストライキ
梱包の不十分、貨物の性質による変質、輸送の遅延などは、(A)でも補償されません。戦争とストライキも3つとも対象外で、別に協会戦争約款・協会ストライキ約款を付けて備えます。
保険会社が補償しない損害を、免責といいます。ICCの第4条は、(A)(B)(C)に共通の免責を定めています。たとえば、保険を掛けた人の故意の不正行為や、通常の目減り、通常の消耗による損害です。
梱包が輸送に耐えられなかった損害も対象外です。貨物の性質による損害も同じで、これを固有の瑕疵といいます。ロイズの資料は、生の果物が時間とともに傷むことを例に挙げます。輸送の遅延による損害は、遅延の原因が補償対象の事故でも出ません。
(B)と(C)には、誰かが不法にわざと貨物を壊した損害を除外する条文もあります。戦争はICCの第6条、ストライキや暴動、テロは第7条で、3つとも除外されています。これに備えるには、協会戦争約款と協会ストライキ約款を別に付けます。
05取引条件との関係。CIFは(C)、CIPは(A)が基準
インコタームズ2020では、CIFの売主は最低でも(C)、CIPの売主は(A)の水準で保険を掛けます。買主が求めれば、買主の費用で戦争やストライキの補償を加えます。
レッスン4-2で学んだように、CIFの売主は、最低でも(C)またはそれに近い条件で保険を掛けます。レッスン4-3のとおり、CIPでは(A)の水準が求められます。どちらも、当事者が合意すれば補償を変えられます。
ICCの規則は、買主が求めたときは、買主の費用で戦争やストライキの補償を加えるよう売主に定めています。ただし、引き受けてもらえる場合に限ります。そのためジェトロは、CIFやCIPでは保険の条件を契約時に相手と詰めておくよう勧めています。
誰がいつ保険を掛けるかはレッスン9-1、保険金額と申込みの手続きはレッスン9-3で学びます。代金が回収できないリスクへの備えはレッスン9-4、製品事故への備えはレッスン9-5で扱います。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。
ロンドンの保険市場が定めた、貨物保険の補償範囲の標準条件。(A)(B)(C)の3種類があり、1982年版と2009年版が併用されている。
除外された損害を除き、偶然の事故による貨物の損害を広く補償する方式。ICC(A)がこれに当たる。
約款に名前の挙がった事故による損害だけを補償する方式。ICC(B)(C)がこれに当たる。
保険会社が補償しないと約款で定めた損害。梱包の不十分、固有の瑕疵、輸送の遅延などがある。
外からの事故がなくても、貨物の性質そのものによって変質や劣化が起きること。ICCでは補償されない。
船や他の貨物を守るために、積んでいる貨物を海に捨てること。ICCの(B)(C)とも補償の対象。
ICCで除外されている戦争などによる損害を補償するために、別に付ける約款。
ICCで除外されているストライキ、暴動、テロなどによる損害を補償するために、別に付ける約款。
出典
- ジェトロ 貿易・投資相談Q&A「荷主としての貨物への保険の種類と留意点:日本」(1982年版・2009年版の併用、ICC(A)(B)(C)の補償範囲と免責、旧約款との対応)
- Lloyd's Agency Department「Cargo Claims and Recoveries Manual」(2019年9月。ICCの成り立ち、(A)のオールリスク、(B)(C)の列挙責任と条文、第4・6・7条の免責)
- ICC Digital Library, "Incoterms® 2020: Rules for Sea and Inland Waterway Transport"(CIFのA5保険。ICC(C)とLMA/IUA、戦争・ストライキの追加補償)
- ICC, "Incoterms® 2020"(FAQ: CIFとCIPの保険補償水準)
LESSON 9-2 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. 協会貨物約款(A)と(B)(C)の違いとして、正しいものはどれですか。
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正解: 1. (A)は除外された損害以外を広く補償し、(B)(C)は名前の挙がった事故だけを補償する
(A)はオールリスク型で、約款で除外された損害を除いて広く補償します。(B)(C)は列挙責任型で、約款に並べられた事故による損害だけが対象です。
Q2. ICC(B)では補償され、ICC(C)では補償されない事故はどれですか。
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正解: 3. 地震・噴火・雷
火災・爆発や、船の座礁・沈没は(C)でも補償されます。地震・噴火・雷は、(B)が(C)に加えている事故の一つです。
Q3. ICC(A)で保険を掛けていても、補償されない損害はどれですか。
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正解: 2. 輸送が遅れたことによる損害
輸送の遅延による損害は、遅延の原因が補償対象の事故であっても、(A)(B)(C)のどれでも補償されません。盗難や雨濡れは(A)で補償されます。
レッスン9-2はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。