HOME / ゼロから学ぶ貿易実務 / 講座 / 第9章 貨物保険と貿易保険 / 貿易保険(NEXI)
第9章 貨物保険と貿易保険 ・ レッスン9-4貿易保険(NEXI)とは。代金回収不能リスクへの備え
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-04
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. CIF価格が300万円の貨物に、通常の考え方で貨物海上保険を掛けます。保険金額はいくらですか。
答えを見る
正解: 2. 330万円
通常は、CIF価格に希望利益として10%を加えた110%を保険金額にします。300万円×110%=330万円です。
Q2. 倉庫間約款で、海上輸送の貨物が仕向地の倉庫に搬入されないまま時間がたった場合、保険期間はいつ終わりますか。
答えを見る
正解: 2. 本船から荷卸ししてから60日がたった時
海上輸送では、本船から荷卸しして60日がたつと保険期間が終わります(それより早く最終倉庫などに搬入されれば、その時点で終わります)。30日は航空貨物の場合の期限です。
このレッスンの学習目標
- 貿易保険と貨物海上保険の違いを説明できる
- 非常危険と信用危険の違いを、具体的な例で説明できる
- 主な保険商品と、海外商社名簿・付保率のしくみがわかる
要点
- 貿易保険とは、海外取引で輸出ができなくなったり、代金が回収できなくなったりしたときの損失をカバーする保険のことです。
- 引き受けるのは株式会社日本貿易保険(NEXI)で、政府が発行済株式のすべてを持っています。
- 貨物海上保険は貨物の損害が対象で、貿易保険は代金回収など取引上のリスクが対象です。
- 対象となるリスクは、戦争や送金規制などの非常危険と、相手の破産や不払いなどの信用危険の2つです。
- 保険を使うには、相手先が海外商社名簿に登録され、一定以上の格付であることが必要です。
01貿易保険とは。通常の保険では救えない危険に備える
貿易保険とは、輸出や投資などの海外取引で、輸出ができなくなる損失や代金が回収できない損失をカバーする保険です。日本では株式会社日本貿易保険(NEXI)が引き受けています。
このレッスンでは、日本の機械部品メーカーA社が、海外のB社に部品を後払いで輸出する例で考えます。後払いでは、船積みの後にB社が代金を払わない心配が残ります。
NEXIは、貿易保険を「海外取引(輸出・投資・融資)の輸出不能や代金回収不能をカバーする保険」と説明しています。貿易保険法第3条は、NEXIの目的を「通常の保険によつて救済することができない危険を保険する事業」と定めています。
同じ法律の第4条で、政府はNEXIの発行済株式のすべてを持つと決められています。NEXIの資本金は全額が政府出資です。
02貨物海上保険との違い。モノの損害か、取引のリスクか
貨物海上保険は、輸送中の事故で貨物が壊れたり失われたりした損害をカバーします。貿易保険は、輸入制限や相手の破産などで代金が入らない、取引上の損失をカバーします。
NEXIのパンフレットは、「海上保険」と「貿易保険」は違うと、間違えやすい点として注意しています。海上保険は貨物そのものが対象で、航海中の危険による損害を補います。貨物海上保険はレッスン9-1から9-3で学びます。
これに対して貿易保険は、輸出契約などの取引上のリスクが対象です。A社の部品が無事にB社に届いても、代金が払われなければ、海上保険からは何も支払われません。この損失に備えるのが貿易保険です。
03非常危険と信用危険。2種類のリスクをカバーする
貿易保険がカバーするのは、戦争や送金規制など当事者に責任のない非常危険と、相手の破産や3か月以上の不払いなどの信用危険です。船積前と船積後で、カバーの内容が分かれます。
非常危険とは、戦争や外貨送金規制など、輸出者にも輸入者にも責任のない不可抗力的な事由によるリスクです。NEXIは、輸入制限・禁止、内乱や革命、テロ、自然災害なども例に挙げています。一般にはカントリーリスクとも呼ばれます。
信用危険とは、相手方の破産手続開始の決定や、3か月以上の不払いなどによるリスクです。ただし、商品のクレームなど、輸出者に責任がある場合は対象外です。
損失は、船積みできなくなる「輸出不能」と、船積み後に代金が入らない「代金回収不能」に分かれます。保険商品によって、どちらをカバーするかが違います。
04主な保険商品。中小企業向けから手形の保険まで
輸出でよく使われる商品には、中小企業・農林水産業輸出代金保険、貿易一般保険(個別保険)、輸出手形保険などがあります。取引の形や頻度に合わせて選びます。
中小企業・農林水産業輸出代金保険は、中堅・中小企業や農林水産業者などが対象です。船積後の代金回収不能だけをカバーします。日本からの輸出で、契約金額5千万円以下などの条件があります。
貿易一般保険(個別保険)は、輸出契約や仲介貿易契約などを対象とする、最も一般的な保険です。案件ごとに使うかを選べ、船積前と船積後の非常危険・信用危険をカバーします。
輸出手形保険は、銀行が買い取ったD/P・D/A手形の不払いをカバーし、買取銀行が被保険者になります。レッスン5-4で学びました。一定の相手と継続して取引する場合の限度額設定型貿易保険や、年間で契約する包括保険もあります。
05海外商社名簿と付保率。保険を使う前に知っておくこと
貿易保険を使うには、相手先をNEXIの海外商社名簿に登録し、一定以上の格付を得ている必要があります。また、損失の全額ではなく、付保率をかけた額が支払われます。
NEXIは、相手先の信用を独自に審査し、アルファベット2文字の格付として海外商社名簿に載せています。名簿に載っていない相手は、事前に登録の申請が必要です。名簿はレッスン3-1でも紹介しました。
付保率とは、保険の対象になる価額のうち、保険でカバーする割合のことです。中小企業・農林水産業輸出代金保険の船積後の付保率は95%で、残りの5%は輸出者の負担になります。
例えば、損失額が1,000万円なら、支払われる保険金は1,000万円×95%=950万円です(計算のための例)。50万円はA社が負担します。製品事故に備えるPL保険は、レッスン9-5で学びます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。
海外取引で、輸出不能や代金回収不能による損失をカバーする保険。日本ではNEXIが引き受ける。
貿易保険法に基づく株式会社。政府が発行済株式のすべてを持つ。
戦争や外貨送金規制など、契約の当事者に責任のない不可抗力的な事由によるリスク。
相手方の破産手続開始の決定や、3か月以上の不払いなどによるリスク。
船積前に事故が起き、貨物を船積みできなくなることによる損失。
船積後に、輸出代金が回収できなくなることによる損失。
NEXIが作る海外の取引先の名簿。名称・住所・格付・バイヤーコードが載る。
保険価額に対する保険金額の割合。保険でカバーされる割合を表す。
出典
LESSON 9-4 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. A社の部品は無事にB社に届きましたが、B社が破産して代金が払われません。この損失に備える保険はどれですか。
答えを見る
正解: 2. 貿易保険
貨物海上保険は貨物の損害、PL保険は製品事故の賠償が対象です。相手の破産による代金回収不能は、貿易保険の信用危険でカバーします。
Q2. 貿易保険の「非常危険」に当たるものはどれですか。
答えを見る
正解: 1. 輸入国が外貨の送金を規制し、代金が送られてこない
外貨送金規制は、当事者に責任のない不可抗力的な事由なので非常危険です。3か月以上の不払いや破産は、信用危険に当たります。
Q3. 付保率が95%の保険で、損失額が600万円のとき、支払われる保険金はいくらですか(保険金額の範囲内とします)。
答えを見る
正解: 3. 570万円
支払保険金は損失額×付保率で、600万円×95%=570万円です。残りの30万円は輸出者の負担になります。
レッスン9-4はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。