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第4章 インコタームズ2020 ・ レッスン4-5

取引条件の選び方とよくある誤解

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-03

前回の復習(1分)

本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。

レッスン4-4から

Q1. DAPで取引するときの貨物保険について、正しい説明はどれですか。

答えを見る

正解: 2. 保険契約の義務はないが、仕向地まで危険を負う売主が通常は保険を付ける
DAPでは売主にも買主にも保険契約の義務はありません。ただし危険は仕向地での引渡しまで売主にあるため、通常は売主が保険を付けます。

レッスン4-2から

Q2. 日本の輸出者が、自社の工場でコンテナに詰めた貨物を港のコンテナヤードで運送人に渡します。買主が船を手配する場合、ICCが勧める規則はどれですか。

答えを見る

正解: 3. FCA
FOBとFASは、本船上や船側で引き渡す規則です。コンテナターミナルで運送人に渡す場合、ICCはFOBではなくFCAを使うよう勧めています。FCAはレッスン4-3で学びます。

このレッスンの学習目標

要点

  1. 取引条件の選び方とは、輸送手段・通関・運送と保険の手配・決済方法の4つの視点から、取引に合うインコタームズの規則を決めることです。
  2. コンテナ輸送や航空輸送では、FOB・CFR・CIFではなく、FCA・CPT・CIPを使うのが勧められています。
  3. 相手国の通関ができない場合は、EXWの代わりにFCA、DDPの代わりにDAPを検討します。
  4. インコタームズは所有権の移転や代金の支払方法を決めません。C規則でも、危険は仕向地ではなく積地側で買主に移ります。
  5. 契約書には「規則+できるだけ正確な場所+Incoterms 2020」をセットで書きます。CIFとCIPでは、売主が付ける保険の水準が違います。

01取引条件を選ぶ4つの視点

規則は、輸送手段、通関を誰が担えるか、運送と保険をどちらが有利に手配できるか、決済方法の4つの視点で選びます。11規則の違いを覚えるより、自分の取引に当てはめて考えることが大切です。

レッスン4-2〜4-4で、11の規則を順に学びました。大づかみにまとめると、次のようになります。EXWと、FCA・FAS・FOBは、売主の国で引き渡し、主な運送は買主が手配します。

C規則(CFR・CIF・CPT・CIP)は、売主が仕向地までの運送を手配して運賃を払います。ただし危険は、売主の国で運送人に渡した時点で買主に移ります。D規則(DAP・DPU・DDP)は、仕向地で引き渡し、そこまでの危険を売主が負います。

どの規則を選ぶかは、取引ごとの事情で決まります。輸送手段、通関、運送と保険の手配、決済の4点を順に確認すると、選びやすくなります。

02輸送手段で選ぶ。コンテナならFCA・CPT・CIP

コンテナ輸送や航空輸送では、FOBよりFCA、CFRよりCPT、CIFよりCIPを使うことが勧められています。FOB・CFR・CIFは海上と内陸水路の輸送のための規則だからです。

FOB・CFR・CIFは、在来船での輸送を前提に生まれた規則です。在来船とは、コンテナを使わずに貨物を積む船のことです。危険は、貨物が本船に積まれたときに移ります。

コンテナ貨物は、港のコンテナヤード(CY)などで運送人に渡します。CYとは、船に積む前のコンテナを置いておく場所です。ジェトロによれば、ここでFOBなどを使うと、渡した後も船に積まれるまで売主が危険を負うという不合理が生じます。

FCA・CPT・CIPなら、運送人に渡した時点で危険が移ります。海・空・陸のどれにも、複数の組み合わせにも使えます。それでも、長年の習慣でFOBやCIFが使われ続けているのが実情です。

03通関・運賃と保険・決済から考える

自分で相手国の通関ができない場合は、EXWの代わりにFCA、DDPの代わりにDAPを検討します。信用状(L/C)で決済するなら、必要な船荷証券を取れる規則か確認します。

EXWでは、輸出通関も買主が行います。買主が売主の国で輸出手続きをするのが難しいなら、売主が輸出通関をするFCAが向いています。DDPでは売主が輸入通関まで行いますが、外国企業に輸入手続きを認めない国もあります。その場合はDAPが候補です。

運送や保険を、より安く確実に手配できる側が受け持つという考え方もあります。決済では、信用状取引で船積船荷証券が求められるのが通常です。船積船荷証券とは、貨物を船に積んだことを示す船荷証券です。2020年版のFCAでは、合意があれば、買主が運送人に指示してこれを売主に発行させられます。

日本の輸入では、関税の課税価格は原則としてCIF価格、つまり輸入港に着くまでの運賃と保険料を含む価格です。FOBなどで買っても、運賃と保険料を加えて申告します。輸入者は、この金額も見込んで条件を比べます。

04よくある誤解4つ

代表的な誤解は、所有権も移ると思う、C規則は仕向地で危険が移ると思う、CIFとCIPの保険は同じと思う、規則名だけ書けば足りると思う、の4つです。

1つ目は、所有権もインコタームズで移ると考えることです。ジェトロによれば、インコタームズは代金や支払方法、所有権の移転時点、契約違反の結果を定めていません。これらは売買契約で決めます。

2つ目は、C規則なら仕向地に着くまで売主が危険を負うと考えることです。ICCは、C規則の危険は運送人に渡した時点で移り、これはよくある重大な誤りだとしています。3つ目は保険です。CIFの保険は協会貨物約款(C)が原則で、CIPは補償範囲の広い(A)が求められます。

4つ目は「FOB Tokyo」のように書いて終わることです。インコタームズは法律でも条約でもないため、2020年版を使うと契約書に明示します。場所も、港や空港のターミナル名までできるだけ正確に書きます。

05売買契約にどう書くか。この章のまとめ

契約書の価格条件には、通貨と単価に加えて「規則+指定場所+Incoterms 2020」を書きます。インコタームズで決まらない所有権や支払いは、ほかの条項で定めます。

第3章では、価格は通貨・単価・規則と場所をセットで書くと学びました。例は「USD 10.00, FCA Yokohama CY, Incoterms 2020」です。所有権の移転や決済の条件は、別の条項で決めます。

C規則では、仕向地を書きます。ICCは、危険が移る引渡しの場所も、できるだけ正確に合意しておくよう勧めています。これで第4章は終わりです。続く章末テストで、11規則の違いと選び方を確認しましょう。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。

在来船Conventional vessel

コンテナを使わず、貨物をそのまま船倉などに積んで運ぶ船。FOB・CFR・CIFはこの輸送を前提に生まれた。

コンテナヤード(CY)Container Yard

船に積む前や降ろした後のコンテナを置いておく、港の敷地。コンテナ貨物の受渡し場所になる。

船積船荷証券Shipped B/L / On Board B/L

貨物を実際に船に積んだことを示す船荷証券。信用状取引では通常これが求められる。

協会貨物約款Institute Cargo Clauses (ICC)

貨物保険の補償範囲を定めた約款。補償が広い順に(A)(B)(C)の3種類がある。

課税価格Customs value

関税を計算するもとになる価格。日本では原則として輸入港までの運賃・保険料を含むCIF価格になる。

指定場所Named place

規則名の後に書く場所。引渡しの場所、C規則では運賃を払う仕向地を示す。

出典

  1. ジェトロ「インコタームズ2020」(貿易・投資相談Q&A。11規則、所有権・代金は定めない、2010年版との違い、契約書への明示)
  2. ジェトロ「コンテナ輸送の貿易取引条件」(貿易・投資相談Q&A。FOB・CFR・CIFよりFCA・CPT・CIP)
  3. ジェトロ「船積船荷証券(Shipped B/L)受取船荷証券(Received B/L)の違い:日本」(信用状取引とFCAの変更点)
  4. ジェトロ「CIF契約輸入におけるTHC費用配分とその留意点:日本」(輸入の課税価格は原則CIF価格)
  5. 税関「1403 原則的な課税価格の決定方法」(カスタムスアンサー。輸入港までの運賃・保険料を加算)
  6. ICC, "Incoterms® 2020"(FCAの改訂、CIFとCIPの保険水準、DATからDPUへ)
  7. ICC Academy, "CPT & CIP Incoterms® 2020 explained: Key differences"(C規則の危険移転の誤解、CIPの保険)
  8. ICC Academy, "DDP & EXW Incoterms® 2020 explained: Key differences"(EXWよりFCA、DDPよりDAP)

LESSON 4-5 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。

Q1. 日本の輸出者が、横浜のコンテナヤードで船会社に貨物を渡し、仕向地までの運賃は自社が払います。保険は買主が付けます。最も適した規則はどれですか。

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正解: 2. CPT
売主が仕向地までの運賃を払い、保険を付けないのはCFRかCPTです。コンテナヤードで運送人に渡すコンテナ輸送なので、CFRよりCPTが勧められます。DAPでは仕向地まで売主が危険を負います。

Q2. インコタームズ2020の説明として、正しいものはどれですか。

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正解: 3. CIPでは、売主は協会貨物約款(A)程度の保険を付ける必要がある
CIPでは補償範囲の広い(A)程度の保険が求められます。CIFの危険は本船に積んだ時点で移ります。所有権の移転は、インコタームズでは定めず、売買契約で決めます。

Q3. 日本の売主が、輸入手続きが難しい国の買主の倉庫まで貨物を届けます。輸入通関は買主に任せたい場合、検討すべき規則はどれですか。

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正解: 1. DAP
DAPなら仕向地で引き渡しつつ、輸入通関は買主が行います。DDPは売主が輸入通関まで行います。EXWは売主の施設で引き渡す規則で、買主の倉庫まで届ける取引には合いません。

レッスン4-5はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第4章 インコタームズ2020 のレッスン一覧
  1. 4-1インコタームズとは
  2. 4-2FOB・CFR・CIF
  3. 4-3EXW・FCA・CPT・CIP
  4. 4-4DAP・DPU・DDP
  5. 4-5条件の選び方と誤解

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