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第5章 代金決済と貿易金融 ・ レッスン5-1決済方法の比較。送金・荷為替手形・信用状
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-03
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. 日本の輸出者が、横浜のコンテナヤードで船会社に貨物を渡し、仕向地までの運賃は自社が払います。保険は買主が付けます。最も適した規則はどれですか。
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正解: 2. CPT
売主が仕向地までの運賃を払い、保険を付けないのはCFRかCPTです。コンテナヤードで運送人に渡すコンテナ輸送なので、CFRよりCPTが勧められます。DAPでは仕向地まで売主が危険を負います。
Q2. A社は「FCA A社工場」の条件で、ドイツのB社に部品を売りました。引渡しが終わるのはどの時点ですか。
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正解: 2. A社が輸出通関を済ませ、B社が手配したトラックに部品を積み込んだ時点
FCAで指定場所が売主の施設の場合、売主が買主の手配した車両に積み込んだ時点で引渡しが終わります。輸出通関は売主が行います。
このレッスンの学習目標
- 送金・荷為替手形・信用状のしくみの違いを説明できる
- 前払い・後払いで、輸出者と輸入者のどちらがリスクを負うかがわかる
- 相手の信用や費用を踏まえて、決済方法を選ぶ考え方がわかる
要点
- 決済方法とは、売買の代金をいつ・どのように支払い、受け取るかの取り決めのことです。
- 送金は銀行を通じて代金を送る方法で、前払いなら輸入者が、後払いなら輸出者がリスクを負います。
- 荷為替手形は、為替手形に船積書類を添えて銀行経由で送り、代金の支払いなどと引き換えに書類を渡す方法です。
- 信用状は、輸入者の取引銀行が条件どおりの書類と引き換えに支払いを約束するもので、輸出者のリスクを大きく減らします。
- 輸出者から見た回収リスクは、前受け、信用状、D/P・D/A、後受けの順に高くなります。
01決済方法は大きく3つ。送金・荷為替手形・信用状
貿易の代金の払い方は、送金・荷為替手形・信用状の3つが基本です。違いは、代金とモノ(またはその権利)をどの順番で、誰の約束で交換するかにあります。
このレッスンでは、日本の機械メーカーA社が、タイのB社に機械を輸出する例で考えます。国内取引と違い、貿易では商品が届くまでに時間がかかります。そのため、代金を先に払うか後に払うかで、どちらかが不安を抱えることになります。
代金の払い方には、銀行を通じて代金を送る送金、手形と書類を銀行経由で送る荷為替手形、銀行が支払いを約束する信用状があります。どれを使うかは、売買契約の決済条件として決めます。
02送金。前払いか後払いかでリスクを負う側が変わる
送金は、輸入者が銀行を通じて代金を送る方法です。前払いなら輸入者が、後払いなら輸出者がリスクを負います。
送金では、電信送金(T/T送金)がよく使われます。T/T送金とは、銀行間で電信により代金を送るしくみです。手続きが速く、広く使われています。払う時期は、全額前払い、全額後払い、前払いと後払いの組み合わせなどを契約で決めます。
A社が代金を船積みの前に受け取る前受け(B社から見れば前払い)なら、A社に回収のリスクはありません。その代わりB社は、払ったのに商品が届かない、品質が違う、納期が遅れるといったリスクを負います。
反対に、商品を送った後に代金を受け取る後受け(後払い)では、A社が代金を回収できないリスクを負います。このような後払いの送金による取引は、オープンアカウントとも呼ばれます。ジェトロは、後受けは信用が確認された相手以外は原則避けるべきとしています。
03荷為替手形。書類と引き換えに支払ってもらう
荷為替手形は、代金を請求する為替手形に船積書類を添えて銀行経由で送る方法です。輸入者は支払いなどと引き換えに書類を受け取ります。
為替手形とは、代金を受け取る側が、支払う人に支払いを求めて振り出す書類です。A社は船積みの後、為替手形に船荷証券(B/L)などの船積書類を添えて、自社の取引銀行からB社の取引銀行へ送ります。
B社は、代金を支払うか、期日に支払うと約束して手形を引き受けるのと引き換えに、書類を受け取ります。前者をD/P(支払渡し)、後者をD/A(引受渡し)といいます。B/Lがないと貨物を受け取れないため、モノとカネをほぼ同時に交換できます。
ただし、銀行が支払いを約束するわけではありません。B社が支払いや引き受けを断れば、A社は代金を受け取れません。輸入者自身の支払い能力に頼る点が弱みです。くわしくはレッスン5-4で学びます。
04信用状。銀行が支払いを約束する
信用状(L/C)は、輸入者の依頼で輸入地の銀行が発行する支払いの確約書です。代金が払われないリスクが、輸入者から発行銀行に移ります。
B社が取引銀行に頼んで信用状を発行してもらうと、A社は条件どおりの書類を出せば、その銀行から代金を受け取れます。B社も、書類と引き換えに代金を払うので、払ったのに書類が来ないという心配がありません。
信用状の取引は、国際商業会議所(ICC)が定めた信用状統一規則(UCP600)に沿って行われるのが一般的です。一方で、発行には銀行の手数料がかかり、銀行の審査も必要です。しくみはレッスン5-2、取引の流れはレッスン5-3で学びます。
05どう選ぶか。リスク・費用・相手の信用で決める
輸出者から見た回収リスクは、前受け、信用状、D/P・D/A、後受けの順に高くなります。安全な方法ほど相手の負担が増えるため、相手の信用に合わせて選びます。
ジェトロは、回収リスクの少ない順を、前受け、信用状、D/P・D/A、後受けとしています。同じ方法でも、支払いの時期が遅いほどリスクは高まります。たとえばD/PよりD/Aのほうがリスクは高くなります。
輸出者に安全な方法は、輸入者にとっては負担になります。前受けは輸入者に商品が届かないリスクを負わせます。信用状は輸入者に手数料と手間がかかるため、それを避けたい輸入者はD/P・D/Aを望むことがあります。
そこで、レッスン3-1の信用調査の結果が生きてきます。信用が十分に確かめられた相手なら後払いの送金も選択肢になりますが、そうでなければ前受けや信用状を求めます。一部だけ前受けにする方法もあります。代金が回収できない場合に備える日本貿易保険(NEXI)の貿易保険は、第9章で学びます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。
銀行間で電信により代金を送るしくみ。貿易の送金でよく使われる。
商品を送る前に代金を支払う(輸出者から見れば受け取る)こと。
商品を送った後に代金を支払う(輸出者から見れば受け取る)こと。
商品を送った後に、送金で代金を受け取る後払いの取引。銀行の支払いの確約はない。
代金を請求する為替手形に、船荷証券などの船積書類を添えたもの。
信用状なしの荷為替手形で、支払い(D/P)または手形の引き受け(D/A)と引き換えに船積書類を渡す条件。
輸入者の依頼で輸入地の銀行が発行する、条件どおりの書類と引き換えに代金を支払うという確約書。
出典
LESSON 5-1 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. A社がタイのB社に機械を輸出します。代金を全額、送金の前払いで受け取る条件にした場合、リスクを負うのは主に誰ですか。
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正解: 2. B社。代金を払ったのに商品が届かないリスクを負う
全額前払いなら、輸出者のA社には回収のリスクがありません。代わりに輸入者のB社が、商品が届かない、品質が違うといったリスクを負います。送金では銀行は支払いを約束しません。
Q2. 輸出者から見て、代金を回収できないリスクが最も高い決済方法はどれですか。
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正解: 1. 商品を送った後に送金を受ける後受け
回収リスクは、前受け、信用状、D/P・D/A、後受けの順に高くなります。後受けは銀行の支払いの約束も書類との引き換えもないため、最もリスクが高い方法です。
Q3. 信用状なしの荷為替手形(D/P・D/A)の説明として、正しいものはどれですか。
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正解: 3. 輸入者は、支払いか手形の引き受けと引き換えに船積書類を受け取る
D/Pは支払いと、D/Aは手形の引き受けと引き換えに船積書類が渡されます。銀行の支払いの約束はないため、輸入者が支払いや引き受けを断ると代金は回収できません。
レッスン5-1はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。