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第2章 貿易のルールと法律 ・ レッスン2-4ウィーン売買条約。国際売買契約の共通ルール
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-03
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. EPAを結んだ国で作られた製品を輸入し、EPA税率を使いたい場合に必要なこととして、正しいものはどれですか。
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正解: 2. 協定の原産地規則を満たす原産品であることを、原産地証明書や原産品申告書で示す
EPA税率は、協定の原産地規則を満たす原産品にだけ適用されます。輸出国の機関が発給する原産地証明書か、自己申告制度の原産品申告書などで示します。
Q2. 食品衛生法などの他法令で許可・承認が必要な貨物について、正しいものはどれですか。
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正解: 3. 許可・承認を受けたことを税関に証明しないと、輸出入は許可されない
関税法第70条により、他法令の許可・承認を受けたことを税関に証明しなければ輸出入は許可されません。規制にあたるかどうかは、各法律を担当する省庁に確認します。
このレッスンの学習目標
- ウィーン売買条約の正式名称と、日本で発効した時期を説明できる
- 条約が適用される取引と、適用されない売買の例を挙げられる
- 条約が定める3つの柱と、契約で適用を排除できることを説明できる
要点
- ウィーン売買条約とは、国境を越えた物品の売買契約について、契約の成立と売主・買主の権利義務を定めた国際条約のことです。正式名称は「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(CISG)です。
- 1980年に採択され、1988年に発効しました。日本では2009年8月1日に効力が発生しています。
- 営業所が異なる締約国にある当事者どうしの物品売買には、原則として自動的に適用されます。消費者向けの売買などは対象外です。
- 契約の成立(申込みと承諾)、売主と買主の義務、契約違反があったときの救済を定めています。
- 当事者は契約で条約の適用を排除できます(第6条)。契約書の準拠法の条項は必ず確認しましょう。
01ウィーン売買条約とは
ウィーン売買条約は、国際的な物品売買の契約に使われる統一ルールを定めた国連の条約です。1980年に採択され、日本では2009年8月1日に発効しました。
正式名称は「国際物品売買契約に関する国際連合条約」です。英語の頭文字からCISGとも呼ばれます。国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)が起草しました。UNCITRALは、国際取引の法律をそろえる国連の委員会です。
条約は1980年4月11日にウィーンで採択され、1988年1月1日に発効しました。日本は2008年7月1日に加入し、2009年8月1日に日本について効力が発生しています。
UNCITRALの締約国一覧では、2026年10月3日の確認時点で97か国が締約国です。米国、中国、韓国、ドイツなど、日本の主な貿易相手国も多く含まれています。
02どんな取引に適用されるのか
営業所が異なる国にある当事者間の物品売買で、両方の国が締約国なら原則として自動的に適用されます。消費者向けの売買や船・航空機の売買などは対象外です。
第1条によると、条約は営業所が異なる国にある当事者間の物品売買契約に適用されます。条件は、両方の国が締約国である場合か、国際私法の準則で締約国の法が適用される場合です。国際私法とは、どの国の法律を使うかを決めるルールです。
たとえば日本の会社が中国の会社と結ぶ売買契約には、原則として条約が適用されます。当事者の国籍は、適用を決めるときに考慮しません(第1条第3項)。基準は国籍ではなく営業所の場所です。
第2条は、適用しない売買を挙げています。個人用・家庭用に買う物品の売買、競り売買、有価証券や通貨の売買、船舶や航空機の売買、電気の売買などです。また、契約の有効性や所有権の移転については規律しません(第4条)。
03条約が定める3つの柱
条約は、契約の成立、売主と買主の義務、契約違反があったときの救済の3つを定めています。会社どうしの物品売買の基本ルールが一通りそろっています。
1つ目は契約の成立です。物品・数量・代金が示され、承諾されれば拘束される意思がある申入れが「申込み」です(第14条)。申込みに同意を示すのが「承諾」で、沈黙だけでは承諾になりません(第18条)。承諾は申込者に届いた時に効力を生じ、その時に契約が成立します(第18条・第23条)。
2つ目は義務です。売主は物品を引き渡し、書類を交付し、所有権を移転します(第30条)。物品は契約どおりの数量・品質・種類でなければなりません(第35条)。買主は代金を支払い、物品を受け取ります(第53条)。
3つ目は救済です。相手が義務を果たさないときは、履行の請求や損害賠償の請求ができます(第45条・第61条)。相手が期待できたものを実質的に奪う「重大な契約違反」なら、契約を解除できます(第25条・第49条)。買主は不適合を見つけたら合理的な期間内に通知し、遅くとも物品の交付から2年以内に通知しなければなりません(第39条)。
04適用を排除できる。契約書の準拠法を確認しよう
当事者は契約で条約の適用を排除したり、一部の規定を変えたりできます(第6条)。実務では、契約書の準拠法の条項に条約の扱いが書かれているかを確認します。
第6条により、当事者は条約の適用を排除でき、規定の効力を変えることもできます。ジェトロは、排除するには契約書で条約を明示的に排除する文言が必要だと説明しています。別の国の法律を準拠法に選んだだけでは、原則として条約が優先されます。準拠法とは、契約に適用する法律のことです。
当事者は、合意した慣習や当事者間で確立した慣行にも拘束されます(第9条)。ジェトロによれば、この慣習にはインコタームズのような国際慣習も含まれます。契約書でインコタームズによると明記すれば、その規定が条約より優先して適用されます。
契約書を読むときは、準拠法の条項と、条約を排除する文言があるかを確認しましょう。契約書や一般取引条件の中身は第3章、インコタームズは第4章で詳しく学びます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。
国際的な物品売買契約の成立と、売主・買主の権利義務を定めた国連の条約。日本では2009年8月1日に発効。
国際取引の法律をそろえる国連の委員会。ウィーン売買条約を起草した。
条約を結び、その条約に拘束される国。
当事者が事業を営む場所。条約の適用は国籍ではなく営業所の所在国で判断する。
物品・数量・代金を示し、承諾があれば拘束されるという意思を示した契約の申入れ。
申込みに同意を示す言明や行為。沈黙だけでは承諾にならない。
相手が契約で期待できたものを実質的に奪うような契約違反。契約解除の要件になる。
契約の解釈や効力について、どの国の法律を適用するかを決めたもの。
出典
- UNCITRAL, "United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods (Vienna, 1980) (CISG)"(採択日・発効日・適用範囲・主な規定)
- UNCITRAL, "Status: United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods (Vienna, 1980) (CISG)"(締約国一覧、2026年10月3日確認)
- UNCITRAL「これからの国際商取引法―UNCITRAL作成文書の条文対訳」8. 国際物品売買契約に関する国際連合条約(条文の日本語訳・概要)
- ジェトロ「ウィーン売買条約の概要:日本」(貿易・投資相談Q&A)
LESSON 2-4 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. 日本の会社(大阪に営業所)と韓国の会社(ソウルに営業所)が、機械部品の売買契約を結びました。両国とも締約国で、契約で条約を排除していません。正しいものはどれですか。
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正解: 2. 原則としてウィーン売買条約が自動的に適用される
営業所が異なる締約国にある当事者間の物品売買には、原則として条約が自動的に適用されます(第1条)。適用を望まない場合は契約で排除します(第6条)。
Q2. ウィーン売買条約が適用されない売買はどれですか。
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正解: 2. 個人が家庭で使うために購入する家具の売買
個人用・家族用・家庭用に買う物品の売買は、原則として対象外です(第2条)。ほかに競り売買、船舶や航空機、電気の売買なども適用されません。
Q3. ウィーン売買条約で、契約が成立するのはいつですか。
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正解: 1. 申込みに対する承諾が効力を生じた時
契約は、承諾が効力を生じた時に成立します(第23条)。承諾は同意の表示が申込者に届いた時に効力を生じ、沈黙だけでは承諾になりません(第18条)。
レッスン2-4はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。