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第2章 貿易のルールと法律 ・ レッスン2-3WTOとEPA・FTA。関税が下がるしくみ
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-03
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. キャッチオール規制で、輸出者が用途や需要者を確認して判断する要件を何といいますか。
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正解: 1. 客観要件
用途要件と需要者要件からなるのが客観要件です。インフォーム要件は、経済産業大臣から通知を受けた場合に許可が必要になる要件です。
Q2. 2025年(確々報値)の日本の貿易について、正しいものはどれですか。
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正解: 2. 輸入が輸出を上回り、貿易収支は約2.9兆円の赤字だった
輸出は約110.4兆円、輸入は約113.3兆円で、貿易収支は約2.9兆円の赤字でした。
このレッスンの学習目標
- WTOの役割と、最恵国待遇・内国民待遇の意味を説明できる
- FTAとEPAの違いと、日本の主なEPAを挙げられる
- EPA税率を使うには原産地規則と原産地の証明が必要なことがわかる
要点
- WTO(世界貿易機関)とは、1995年1月1日に設立された、貿易のルールを定める国際機関のことです。
- WTOの基本原則は、すべての加盟国を同じに扱う最恵国待遇と、輸入品と国産品を同じに扱う内国民待遇です。
- 日本はWTO加盟国・地域に対し、一定率以上の関税を課さないと約束しています。この税率を協定税率といいます。
- EPAはFTAの要素(物品とサービスの貿易自由化)に、投資や知的財産などを加えた包括的な協定です。
- EPA税率を使うには、原産地規則を満たす原産品であることを、原産地証明書や原産品申告書で示す必要があります。
01WTOとは。貿易のルールを決める国際機関
WTO(世界貿易機関)とは、1995年1月1日に設立された、国と国の貿易ルールを定める国際機関です。本部はスイスのジュネーブにあります。
WTOの前身は、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)という取決めです。日本は1955年にGATTに加わり、WTOには設立日の1995年1月1日から加盟しています。
WTOの公式サイトでは、加盟国・地域の数は166と紹介されています(2026年10月時点の確認)。国だけでなく、貿易政策を独自に決められる関税地域も加盟できるため、「加盟国・地域」と呼びます。
WTOの加盟国・地域は、モノの関税に上限を約束します。この約束を譲許(じょうきょ)といいます。日本が譲許している税率を協定税率といいます。国内の法律で決めた税率より低ければ、WTOの全加盟国・地域からの産品に適用されます。
02最恵国待遇と内国民待遇。WTOの2つの基本原則
最恵国待遇は、ある国に与えた有利な扱いを、ほかのすべての加盟国にも与える原則です。内国民待遇は、市場に入った輸入品を国産品と同じに扱う原則です。
最恵国待遇(MFN)では、たとえばある国の製品の関税を下げたら、同じ製品にはすべての加盟国に同じ低い税率を適用します。特定の相手だけをひいきしないためのルールです。この税率をMFN税率と呼ぶこともあります。
内国民待遇は、輸入品が国内の市場に入った後の扱いについての原則です。国内で売るときの税金や規制で、輸入品を国産品より不利にしてはいけません。輸入時に関税をかけること自体は、この原則に反しません。
ただし、最恵国待遇には例外があります。WTOは、一部の国どうしで関税を下げる自由貿易協定や、開発途上国への優遇を、厳しい条件のもとで認めています。この例外が、次に学ぶFTA・EPAです。
03FTAとEPAの違い
FTA(自由貿易協定)は物品とサービスの貿易を自由化する協定です。EPA(経済連携協定)は、それに投資や知的財産の保護などを加えた、より幅広い協定です。
財務省によると、EPAはFTAの要素(物品とサービスの貿易自由化)に、貿易以外の分野も加えた包括的な協定です。貿易以外の分野とは、知的財産の保護、投資、政府調達、二国間協力などです。
EPAやFTAを結んだ国どうしは、MFN税率より低い関税を決められます。そのため協定を結んでいない国より、低い税率で輸出入できる場合があります。ただし、すべての品目の関税が下がるわけではありません。
04日本の主なEPAと、税率の選ばれ方
日本は、CPTPP、日EU・EPA、RCEPなど多くの協定を結んでいます。輸入では、条件を満たせばEPA税率など、より低い税率が優先して使えます。
税関の説明では、2024年12月15日現在、EPA税率の対象となる協定が20発効しています。12か国によるCPTPP、日本・中国・韓国など14か国によるRCEP、日EU・EPA、日英EPA、日米貿易協定などです。
開発途上国からの輸入品には、一般特恵関税(GSP)という低い税率もあります。日本では1971年8月から実施され、原則として一般特恵制度原産地証明書(様式A)が必要です。
税関は、ベトナム産のコーヒー豆(いったもの)を例に挙げています(2025年4月1日現在の税率)。基本税率20%、協定税率12%、特恵税率10%に対し、CPTPPのEPA税率は無税です。条件を満たせば、最も低い無税が適用されます。
05EPA税率を使うには原産地の証明が必要
EPA税率は、相手国で作られただけでは使えません。協定の原産地規則を満たす原産品であることを、原則として輸入申告のときに書類で示す必要があります。
原産地規則とは、貨物の原産地、つまりモノの「国籍」を決めるルールです。協定を結んでいない国の製品が、相手国を経由するだけで安い税率を使う迂回輸入を防ぐ目的があります。品目ごとの規則を調べるには、HSコードという品目の番号を使います。
証明の方法は2つです。1つは、輸出国の権限ある機関が原産地証明書を発給する第三者証明制度です。もう1つは、輸出者・生産者・輸入者が自ら原産品申告書を作る自己申告制度です。日本からの輸出では、CPTPPや日EU・EPAなどが自己申告制度を採用しています。
原産地規則と原産地証明書は第10章で、HSコードと関税率表の読み方も第10章で詳しく学びます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。
1995年1月1日に設立された、貿易のルールを定める国際機関。本部はジュネーブ。
ある加盟国に与えた有利な扱いを、ほかのすべての加盟国にも与える原則。
国内市場に入った輸入品を、国産品と同じに扱う原則。
日本がWTO加盟国・地域に対し、これ以上の関税を課さないと約束(譲許)している税率。
特定の国・地域の間で、物品とサービスの貿易を自由化する協定。
FTAの要素に、投資・知的財産・政府調達などを加えた包括的な協定。
貨物の原産地(モノの国籍)を決めるルール。EPA税率を使う条件になる。
開発途上国・地域の産品に、一般より低い税率を適用する制度。日本では1971年から実施。
出典
- WTO, "What is the WTO?"(設立日・本部所在地・加盟数)
- WTO, "Principles of the trading system"(最恵国待遇・内国民待遇・譲許)
- WTO, "Japan and the WTO"(日本の加盟日)
- 財務省「経済連携協定(EPA)等」
- 税関「1105 関税率の種類(カスタムスアンサー)」
- 税関「1501 特恵関税制度の概要(カスタムスアンサー)」
- 税関「1524 経済連携協定(EPA)税率を適用する場合の輸入通関手続(原産地証明手続)について」
- 税関 EPA・原産地規則ポータル「原産地規則とは」
- 税関 EPA・原産地規則ポータル「EPAの自己申告制度を利用した日本からの輸出について」
- ジェトロ「EPA活用法・マニュアル」
LESSON 2-3 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. WTO加盟国Aが、加盟国Bの製品だけ関税を下げ、同じ製品を輸出する他の加盟国には高い関税のままにしました。どの原則に反しますか。
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正解: 2. 最恵国待遇
ある国に与えた有利な扱いは、すべての加盟国に与えるのが最恵国待遇です。ただしFTA・EPAなど、WTOが認める例外もあります。
Q2. EPAについての説明として、正しいものはどれですか。
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正解: 2. FTAの要素に加え、投資や知的財産の保護なども含む包括的な協定
EPAは、物品とサービスの貿易自由化(FTAの要素)に、投資・知的財産・政府調達などを加えた協定です。全加盟国に同じ税率を適用するのはWTOの最恵国待遇です。
Q3. EPAを結んだ国で作られた製品を輸入し、EPA税率を使いたい場合に必要なこととして、正しいものはどれですか。
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正解: 2. 協定の原産地規則を満たす原産品であることを、原産地証明書や原産品申告書で示す
EPA税率は、協定の原産地規則を満たす原産品にだけ適用されます。輸出国の機関が発給する原産地証明書か、自己申告制度の原産品申告書などで示します。
レッスン2-3はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。