HOME / ゼロから学ぶ貿易実務 / 講座 / 第5章 代金決済と貿易金融 / 信用状のしくみ

第5章 代金決済と貿易金融 ・ レッスン5-2

信用状(L/C)のしくみと当事者

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-03

前回の復習(1分)

本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。

レッスン5-1から

Q1. 輸出者から見て、代金を回収できないリスクが最も高い決済方法はどれですか。

答えを見る

正解: 1. 商品を送った後に送金を受ける後受け
回収リスクは、前受け、信用状、D/P・D/A、後受けの順に高くなります。後受けは銀行の支払いの約束も書類との引き換えもないため、最もリスクが高い方法です。

レッスン4-4から

Q2. インコタームズ2020の11規則のうち、輸入関税の支払いが売主の義務になる規則はどれですか。

答えを見る

正解: 1. DDPだけ
売主が輸入通関を行い輸入関税を払うのはDDPだけです。DAPとDPUでは、仕向地で引き渡しても輸入通関と関税の支払いは買主の義務です。

このレッスンの学習目標

要点

  1. 信用状(L/C)とは、輸入者の依頼で銀行が発行し、条件どおりの書類が呈示されれば支払うと約束するもののことです。
  2. ルールはICCの「荷為替信用状に関する統一規則および慣例」で、現行は2007年改訂版のUCP600です。
  3. 中心の当事者は、発行依頼人(輸入者)、受益者(輸出者)、発行銀行です。通知銀行は信用状を知らせるだけで、支払いの約束はしません。
  4. 発行銀行の信用が不安なときは、別の銀行に確認を加えてもらう確認信用状を使えます。
  5. UCP600の信用状は明記がなくても取消不能です。銀行は売買契約や商品ではなく、書類だけを見て支払いを判断します。

01信用状とは。銀行が支払いを約束するしくみ

信用状とは、輸入者の依頼で銀行が発行し、条件どおりの書類が呈示されれば支払うと約束するものです。ルールはICCが定めたUCP600で、2007年の改訂版が現行です。

信用状(L/C)は、発行銀行が輸出者に対して代金の支払いを約束するものです。条件は、信用状どおりの書類が呈示されることです。呈示とは、書類を銀行に差し出すことです。

日本の機械メーカーA社が、タイのB社に機械を輸出するとします。B社の依頼でタイの銀行が信用状を発行すると、A社が頼る相手はB社から銀行に変わります。輸入者の信用リスクが、発行銀行の信用リスクに置き換わるわけです。

信用状のルールは、国際商業会議所(ICC)の「荷為替信用状に関する統一規則および慣例」です。現行は2007年改訂版のUCP600で、2007年7月1日に実施されました。信用状にこの規則に従うと明記することで適用されます。

02信用状の当事者。輸入者・輸出者と銀行

中心になるのは、発行依頼人(輸入者)、受益者(輸出者)、発行銀行の3者です。これに、輸出地で信用状を知らせる通知銀行や、買取りを行う指定銀行(買取銀行)が加わります。

発行依頼人とは、銀行に信用状の発行を頼む人で、通常は輸入者です。受益者とは、信用状で代金を受け取る人で、通常は輸出者です。例ではB社が発行依頼人、A社が受益者です。

発行銀行は、発行依頼人の依頼で信用状を発行し、支払いを約束する銀行です。通知銀行は、発行銀行の依頼で受益者に信用状を知らせる銀行です。外見上本物らしいかを確かめて通知しますが、支払いの約束はしません。

指定銀行とは、信用状を利用できる銀行として指定された銀行です。買取りとは、手形や書類を買い取って、受益者に代金を先に払うことです。この役割の銀行を買取銀行と呼びます。ただし確認銀行でない指定銀行は、自ら合意しない限り買い取る義務を負いません。

03確認信用状。発行銀行の信用が不安なとき

確認信用状とは、発行銀行の支払いの約束に、別の銀行の確約を加えた信用状です。確認銀行は、条件どおりの書類が呈示されれば、発行銀行とは別に支払いや買取りを約束します。

信用状で輸出者が頼るのは、発行銀行の信用です。発行銀行が倒産したり、その国でカントリーリスクが起きたりすると、支払いが滞るおそれがあります。カントリーリスクとは、相手国の政治や経済の事情で支払いが止まる危険です。

そこで、信用度の高い銀行に確認を加えてもらう方法があります。確認銀行とは、発行銀行の授権や依頼で確認を加える銀行です。発行銀行が倒産しても、確認銀行から支払いを受けられます。ただし、条件どおりの書類が前提です。

確認を加えるかどうかは確認銀行が決め、断ることもできます。信用状に「Confirmed」とあっても、確認銀行からの確認の通知がなければ確認信用状ではありません。受益者の依頼で取引銀行が確認するサイレントコンファーメーションもあり、その手数料は受益者が負担します。

04取消不能と、銀行は書類だけを見る原則

UCP600の信用状は、明記がなくても取消不能です。また、信用状は売買契約から独立した取引で、銀行は商品ではなく書類だけを扱います。

UCP600第3条は、信用状はその旨の表示がなくても取消不能だと定めています。第10条により、信用状の変更や取消しには、発行銀行、確認銀行(ある場合)、受益者の同意が必要です。輸入者の都合だけでは取り消せません。

信用状は売買契約をもとに発行されますが、発行後は契約から独立した取引になります。これを信用状独立の原則といいます(第4条)。また、銀行は書類を扱い、商品やサービスそのものは扱いません。これを書類取引の原則といいます(第5条)。

そのため書類が条件どおりなら、届いた機械の品質が契約と違っても、発行銀行は支払いを拒めません。品質の問題は、売買契約にもとづき売主と買主の間で解決します。輸入者は、第三者の検査証明書を必要書類に加える対策も取れます。

05信用状に書かれる主な項目

信用状には、金額、利用できる銀行と方法、有効期限、最終船積日、必要書類、書類の呈示期限などが書かれます。輸出者は受け取ったらすぐ、契約と食い違いがないかを確かめます。

UCP600第6条により、信用状には利用できる銀行と利用方法を書きます。方法は、一覧払い・後日払い・引受け・買取りのいずれかです。一覧払いとは、書類の呈示を受けてすぐに払うことです。書類を呈示する有効期限も必ず書きます。

運送書類の原本を含む場合、書類は船積み後21日以内、かつ有効期限内に呈示するのが原則です(第14条c)。ジェトロは、輸入者は契約で合意した船積み時期に合わせて期限を決めるのが望ましいとしています。

このほか、信用状の金額、船積みの期限である最終船積日、インボイスや船荷証券などの必要書類が書かれます。輸出者は、契約と矛盾があれば修正(アメンド)を求めます。書類を出してから支払いまでの流れと、ディスクレパンシーはレッスン5-3で学びます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。

信用状(L/C)Letter of Credit / Documentary Credit

輸入者の依頼で銀行が発行し、条件どおりの書類が呈示されれば支払うと約束するもの。UCP600では取消不能とされる。

発行依頼人Applicant

銀行に信用状の発行を依頼する人。通常は輸入者。

受益者Beneficiary

信用状で代金を受け取る人。通常は輸出者。

発行銀行Issuing bank

発行依頼人の依頼で信用状を発行し、条件どおりの書類に対する支払いを約束する銀行。

通知銀行Advising bank

発行銀行の依頼で、受益者に信用状を知らせる銀行。確認銀行でない限り、支払いの約束はしない。

指定銀行・買取銀行Nominated bank / Negotiating bank

信用状を利用できる銀行として指定された銀行。手形や書類を買い取って受益者に代金を先に払う役割の銀行を買取銀行と呼ぶ。

確認信用状・確認銀行Confirmed L/C / Confirming bank

発行銀行の約束に、別の銀行(確認銀行)が自らの支払いの確約を加えた信用状。

UCP600Uniform Customs and Practice for Documentary Credits, 2007 Revision

ICCが定めた信用状取引の国際ルール。2007年改訂版で、2007年7月1日に実施された。

出典

  1. ICC Digital Library, "UCP 600: Uniform Customs and Practice for Documentary Credits"(第1〜10条・第12条・第14条・第29条の規則本文。当事者の定義、取消不能、独立性、確認、通知、指定、呈示期限)
  2. ICC, "ICC's new rules on documentary credits now available"(UCP600の公表と2007年7月1日の実施)
  3. ジェトロ「信用状(L/C)発行銀行の信用リスクと確認信用状(Confirmed L/C)」(貿易・投資相談Q&A)
  4. ジェトロ「信用状取引の特徴および信用状で使用される用語の解釈:日本」(貿易・投資相談Q&A。信用状独立の原則と書類取引の原則)
  5. ジェトロ「L/Cの有効期限と呈示期限:日本」(貿易・投資相談Q&A)
  6. ジェトロ「信用状の『TT Reimbursement is acceptable』の意味:日本」(貿易・投資相談Q&A。信用状発行依頼人=輸入者)

LESSON 5-2 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。

Q1. A社は信用状どおりの書類を呈示しました。その後、機械を受け取ったB社が「品質が契約と違う」と主張しています。発行銀行の対応として正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 3. 書類が条件どおりなら、発行銀行は支払わなければならない
信用状は売買契約から独立した取引で、銀行は商品ではなく書類だけを扱います。書類が条件どおりなら支払いは拒めません。品質の問題は売買契約にもとづいて当事者間で解決します。

Q2. 信用状取引の「通知銀行」の説明として正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 発行銀行の依頼で受益者に信用状を知らせる銀行で、それだけでは支払いの約束はしない
通知銀行は、信用状が外見上本物らしいかを確かめて受益者に知らせます。確認銀行でない限り、支払いの約束はしません。信用状を発行するのは発行銀行です。

Q3. 届いた信用状に「Confirmed」と書かれていますが、どの銀行からも確認の通知はありません。この信用状について正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 2. 確認銀行による確認の通知がなければ、確認信用状ではない
確認を加えるかどうかは確認銀行が決め、断ることもできます。そのため、信用状に「Confirmed」とあっても、確認銀行からの確認の通知がなければ確認信用状ではありません。

レッスン5-2はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第5章 代金決済と貿易金融 のレッスン一覧
  1. 5-1決済方法の比較
  2. 5-2信用状のしくみ
  3. 5-3L/C取引の流れ
  4. 5-4D/P・D/A
  5. 5-5貿易金融

講座の目次(全14章)へ