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第5章 代金決済と貿易金融 ・ レッスン5-4D/P・D/A。信用状なしの荷為替手形決済
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-03
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. A社は5月10日に機械を船積みしました。信用状に呈示期間の定めはなく、有効期限は6月30日です。書類の呈示期限として正しいものはどれですか。
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正解: 2. 5月31日まで
呈示は、船積みから21日以内で、かつ有効期限内に行います(UCP600第14条c)。5月10日の21日後は5月31日で、有効期限より前なので5月31日が期限です。5銀行営業日は、銀行が書類を点検する期間です。
Q2. A社がタイのB社に機械を輸出します。代金を全額、送金の前払いで受け取る条件にした場合、リスクを負うのは主に誰ですか。
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正解: 2. B社。代金を払ったのに商品が届かないリスクを負う
全額前払いなら、輸出者のA社には回収のリスクがありません。代わりに輸入者のB社が、商品が届かない、品質が違うといったリスクを負います。送金では銀行は支払いを約束しません。
このレッスンの学習目標
- 信用状なしの荷為替手形が代金取立で決済されるしくみと、関わる当事者を説明できる
- D/PとD/Aで、輸入者が船積書類を受け取るタイミングの違いを説明できる
- 取立で輸出者が負うリスクと、L/Cとの違い、輸出手形保険の役割を説明できる
要点
- 代金取立とは、銀行が輸出者の依頼を受けて、輸入者から手形代金を取り立てることです。信用状なしの荷為替手形は、通常この扱いになります。
- D/P(支払渡し)では輸入者が代金を払うのと引き換えに、D/A(引受渡し)では期限付きの手形を引き受けるのと引き換えに、船積書類が渡されます。
- 取立で銀行は代理人として動くだけで、支払いは約束しません。輸出者は輸入者の不払いのリスクを負い、D/AはD/Pよりリスクが高くなります。
- 取立にはICCの取立統一規則(URC522)が使われます。L/Cより費用が低く、信頼関係のある相手との取引に向いています。
- 銀行が買い取ったD/P・D/A手形の不払いには、NEXIの輸出手形保険で備えられます。被保険者は買取銀行です。
01信用状なしの荷為替手形は「代金取立」で決済する
信用状なしの荷為替手形決済では、銀行は代金の支払いを約束せず、輸出者の依頼で輸入者から代金を取り立てます。これを代金取立といいます。
荷為替手形とは、代金を請求する為替手形に船積書類を添えたものです。信用状なしで使う場合、輸入者の支払いを保証する銀行がありません。そのため通常は、代金取立という扱いになります。
代金取立とは、銀行が輸出者の依頼を受けて、輸入者から手形代金を集めることです。例として、日本の機械メーカーA社がタイのB社に機械を輸出する場面で考えます。A社は船積み後、荷為替手形を取引銀行に持ち込み、取立を頼みます。
手形の支払人は、特約がなければ輸入者のB社です。ICCの解説では、取立で銀行は代理人として動くだけです。取立の指図に従う以上の責任は負いません。
02取立の当事者と、書類と代金の流れ
取立には、輸出者(取立依頼人)、輸出者の取引銀行、輸入地の取立銀行、輸入者(支払人)が関わります。書類は銀行を通って輸入者に届きます。
取立依頼人とは、銀行に取立を頼む輸出者、例ではA社のことです。A社の取引銀行は、手形と船積書類をタイの銀行に送ります。この銀行は英語でremitting bankと呼ばれます。
取立銀行とは、書類を受け取り、輸入者に手形を呈示する輸入地の銀行です。呈示とは、手形を見せて支払いなどを求めることです。B社は条件に従って支払うか手形を引き受け、書類を受け取ります。
B社は、受け取った船荷証券で船会社から機械を引き取ります。代金はA社の取引銀行を通してA社に支払われます。A社への入金は、取立が終わってからです。
03D/PとD/A。書類を渡すタイミングの違い
D/Pは輸入者が代金を支払うのと引き換えに、D/Aは期限付きの手形を引き受けるのと引き換えに、銀行が船積書類を渡す条件です。
D/P(Documents against Payment、支払渡し)では、B社が手形代金を払うと書類が渡されます。ICCは、D/Pを一覧払いの取立として説明しています。一覧払いとは、手形を見せられたらすぐ支払う条件のことです。
D/A(Documents against Acceptance、引受渡し)では、手形の期日が後に設定されます。たとえば「船積み後60日払い」の手形です。B社は期日に必ず払うと約束する署名をして、手形を引き受けます。
D/Aでは、B社は引受と引き換えに書類を受け取り、代金を払う前に機械を引き取れます。A社は期日まで代金を待つことになります。なおD/P・D/Aは、本来は船積書類を渡す条件を表す言葉です。
04輸出者のリスクと、取立が使われる場面
取立には銀行の支払約束がなく、輸出者は輸入者の不払いのリスクを負います。D/AはD/Pよりリスクが高く、取立は信頼関係のある相手との取引に向いています。
ジェトロは、輸出者にとってのリスクはL/C、D/P・D/A、後払いの送金の順に高くなると説明しています。D/P・D/Aは書類と引き換えなので送金より安心ですが、L/Cのような銀行の支払確約はありません。
D/Pでも、B社が書類を受け取らなければ、機械は届いた港に残ります。ICCは、その場合に急いで別の売り先を探す必要が出ると説明しています。D/Aでは、引受の後に期日になっても払われない危険があります。
一方、銀行の役割が書類の送付と取立に限られるため、L/Cより費用が低く済みます。ICCは、取立は取引実績のある相手に向くとしています。L/Cのしくみはレッスン5-2で学びます。
05取立統一規則(URC522)と輸出手形保険
取立には、ICCが定めた取立統一規則(URC522)が使われます。銀行が買い取った手形の不払いには、日本貿易保険(NEXI)の輸出手形保険で備えられます。
URC522は、銀行・売主・買主が取立を進めるための実務ルールです。ICCによると、取立ごとに指図を書いた書類を付けることを求めています。また、銀行は書類の中身を点検しないことを明確にしています。
取立のほかに、銀行が手形を買い取る扱いもあります。買取とは、銀行が取立の完了を待たずに代金を先に輸出者へ払うことです。輸出者は早く資金を受け取れます。
NEXIの輸出手形保険は、銀行が買い取ったD/P・D/A手形などが満期に払われない損失をカバーします。被保険者は買取銀行で、取立依頼の手形は対象外です。貿易保険は第9章で学びます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。
銀行が輸出者の依頼を受けて、輸入者から手形代金を取り立てること。銀行は代金の支払いを約束しない。
輸入者が手形代金を支払うのと引き換えに、船積書類を渡す条件。
輸入者が期限付きの手形を引き受け、期日の支払いを約束するのと引き換えに、船積書類を渡す条件。
銀行に荷為替手形の取立を依頼する輸出者。
送られてきた荷為替手形を輸入者に呈示し、支払いや引受と引き換えに船積書類を渡す輸入地の銀行。
ICCが定めた、代金取立の進め方についての国際的な実務ルール。
銀行が取立の完了を待たずに、荷為替手形の代金を先に輸出者へ支払うこと。
NEXIの保険。銀行が買い取ったD/P・D/A手形などが満期に払われない損失をカバーし、買取銀行が被保険者となる。
出典
- ジェトロ「輸出取引における決済方式の変更を依頼された際の留意点:日本」(貿易・投資相談Q&A。L/C・D/P・D/A・送金のリスクの比較)
- ジェトロ「輸出における代金回収等留意点:日本」(貿易・投資相談Q&A。信用状なしD/P・D/A手形取引と輸出手形保険)
- ジェトロ「貿易決済で使用される為替手形の必要記載事項」(貿易・投資相談Q&A。D/P・D/A手形の支払人と満期の表示)
- ジェトロ大分・大分県貿易協会「OITA TRADE & VIEWS」2023年8月号「輸出取引の仕組み(19)代金決済」(代金取立と買取、取立依頼人・取立銀行)
- ICC Academy, "Key trade finance products: Definitions and use cases"(documentary collectionsの当事者、D/PとD/A、銀行の責任、費用)
- ICC, "URC 522: Uniform Rules for Collections"(取立統一規則の概要)
- 日本貿易保険(NEXI)「輸出手形保険」パンフレット(2026年3月発行)
- 中小機構 海外ビジネスナビ「海外には手形はないの?貿易決済条件・お金のやりとりのあれこれ」(D/P・D/Aで書類を渡すしくみ)
LESSON 5-4 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. A社はタイのB社に、信用状なしのD/A条件で機械を輸出しました。B社が船積書類を受け取れるのはどの時点ですか。
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正解: 3. 期限付きの手形を引き受けた時点
D/A(引受渡し)では、輸入者が期日に支払うと約束して手形を引き受けると、船積書類が渡されます。代金を払うと渡されるのはD/P(支払渡し)です。
Q2. 信用状なしの荷為替手形を代金取立で決済するとき、銀行の役割として正しいものはどれですか。
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正解: 1. 指図に従って書類を送り代金を取り立てるが、輸入者が払わなくても代わりに支払う義務はない
取立で銀行は代理人として動くだけで、支払いは約束しません。URC522は、銀行が書類の中身を点検しないことも明確にしています。
Q3. ジェトロの説明に沿って、輸出者にとってリスクが低い順に並べたものはどれですか。
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正解: 2. L/C → D/P → D/A
L/Cは銀行が支払いを確約するので最も安心です。D/P・D/Aには銀行の支払確約がなく、支払いが後になるD/AはD/Pよりリスクが高くなります。
レッスン5-4はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。