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第3章 取引先探しと売買契約 ・ レッスン3-2

引合い・オファー・カウンターオファー。契約が成立するまで

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-03

前回の復習(1分)

本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。

レッスン3-1から

Q1. 初めて取引する海外の相手について、信用調査で特に問題が見つからなかった場合の進め方として、適切なものはどれですか。

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正解: 3. まず小口の取引から始め、様子を見ながら取引の額を広げる
問題が見つからなくても、最初は小口の取引から始め、相手の対応を見ながら少しずつ取引を広げるのが慎重な進め方です。

レッスン2-3から

Q2. EPAについての説明として、正しいものはどれですか。

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正解: 2. FTAの要素に加え、投資や知的財産の保護なども含む包括的な協定
EPAは、物品とサービスの貿易自由化(FTAの要素)に、投資・知的財産・政府調達などを加えた協定です。全加盟国に同じ税率を適用するのはWTOの最恵国待遇です。

このレッスンの学習目標

要点

  1. オファーとは、取引条件を示して、相手が受ければ契約を結ぶという申入れのことです。法律上は「申込み」と呼びます。
  2. 商談は、相手からの問い合わせである引合いから始まります。その後、オファーと買い手側の提示(ビッド)をやり取りして条件を詰めます。
  3. 相手が受ければすぐ契約になるファームオファーと、売り手の最終確認で契約になるサブコンオファーがあります。
  4. 条件を変えて返事をすると、元のオファーの拒絶となり、カウンターオファーになります(ウィーン売買条約第19条)。
  5. 契約は書面がなくても成立します。それでも、合意した条件は契約書や注文書などの書面に残しておくことが大切です。

01引合いから契約成立までの流れ

貿易の商談は、引合いに始まり、オファーとビッドのやり取りを経て、どちらかが相手の条件を受けた時点で契約が成立します。

引合い(Inquiry)とは、商品の価格や条件についての問い合わせのことです。売り手と買い手のどちらからでも始まります。

中小企業基盤整備機構(中小機構)の解説では、商談は売り手のオファーと買い手のビッドを交互に出して進みます。ビッドは、買い手が示す買いたい条件です。どちらも規格、単価、数量、決済条件、包装、船積時期などを一括して示します。

相手が条件を受けないときは、自分の希望する条件を示し返します。どちらかが相手の示した条件を受けた時点で、契約が成立します。その後、確認した条件どおりに契約書を作って署名するのが、貿易の商慣習とされています。

02オファー(申込み)とは。ファームオファーとサブコンオファー

オファーとは、物品・数量・代金を示し、承諾されれば拘束されるという意思を示した申入れです。ファームオファーとサブコンオファーの2種類を区別します。

第2章4で学んだとおり、ウィーン売買条約は申込みの条件を第14条で定めています。特定の相手に向けた、十分に確定した申入れであることが必要です。不特定の相手への申入れは、原則として申込みの誘引にとどまります。申込みの誘引とは、相手に申込みをしてもらうための呼びかけです。

中小機構の解説では、ファームオファー(確定売り申込み)は、相手が受ければすぐに契約が成立するオファーです。サブコンオファー(最終確認条件付き売り申込み)は、相手が受けても、売り手が最終確認して初めて契約が成立します。英語では「subject to our final confirmation」と書きます。

条約では、申込みは相手が承諾を発信する前なら撤回できます(第16条1項)。ただし、承諾の期間を定めるなどして撤回できないと示した申込みは撤回できません(第16条2項)。日本の民法も、承諾の期間を定めた申込みは原則として撤回できないとしています(第523条)。

03条件を変えて返事をするとカウンターオファーになる

承諾のつもりでも、条件の追加や変更を含む返事は、元のオファーの拒絶であり、新しいオファーになります。これをカウンターオファー(反対申込み)と呼びます。

ウィーン売買条約第19条1項は、追加・制限その他の変更を含む返事を、申込みの拒絶かつ反対申込みとしています。たとえば「価格を5%下げれば買います」という返事は、承諾ではありません。今度は売り手が、それを受けるかどうかを決める番になります。

第19条3項は、申込みの内容を実質的に変える条件を挙げています。代金、支払、物品の品質や数量、引渡しの場所や時期、責任の限度、紛争解決に関する条件です。実質的でない小さな変更なら、申込者がすぐに異議を述べない限り承諾となります(第19条2項)。

注意したいのは、拒絶の通知が届くと、元の申込みは効力を失うことです(第17条)。カウンターオファーを出した後に、やはり元の条件で受けたいと思っても、それだけでは契約は成立しません。日本の民法第528条も、変更を加えた承諾を新たな申込みとみなしています。

04承諾で契約成立。合意した条件は書面に残す

契約は、承諾が申込者に届いて効力を生じた時に成立します。書面は法律上の要件ではありませんが、合意内容は契約書や注文書で記録に残しましょう。

第2章4で見たように、承諾は申込者に届いた時に効力を生じ、その時に契約が成立します(第18条・第23条)。承諾の期間を定めた場合は、その期間内に届かないと承諾は効力を生じません(第18条2項)。

条約第11条は、売買契約を書面で結ぶ必要はないとしています。日本の民法第522条2項も、原則として書面などの方式は不要としています。つまり、メールや口頭のやり取りだけでも契約が成立することがあります。

ジェトロは、契約書(または注文書)に、契約対象、数量、価格、受け渡しの場所と時期などを明記するよう勧めています。最終的に合意した条件は、どのメールのどの条件かが分かる形で残しましょう。契約書に何を書くかは、次の第3章3で学びます。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。

引合いInquiry

商品の価格や取引条件についての問い合わせ。商談の出発点になる。

オファー(申込み)Offer

物品・数量・代金などの条件を示し、相手が承諾すれば契約に拘束されるという意思を示した申入れ。

ビッドBid

買い手が売り手に示す、買いたい条件の提示。

ファームオファー(確定売り申込み)Firm offer

相手が受ければすぐに契約が成立するオファー。

サブコンオファー(最終確認条件付き売り申込み)Offer subject to our final confirmation

相手が受けても、売り手の最終確認があって初めて契約が成立するオファー。

カウンターオファー(反対申込み)Counter-offer

申込みに追加や変更を加えた返事。元の申込みの拒絶となり、新しい申込みとして扱われる。

申込みの誘引Invitation to make offers

相手に申込みをしてもらうための呼びかけ。それ自体は申込みではない。

承諾Acceptance

申込みに同意を示す言明や行為。申込者に届いた時に効力を生じ、契約が成立する。

出典

  1. UNCITRAL「これからの国際商取引法―UNCITRAL作成文書の条文対訳」8. 国際物品売買契約に関する国際連合条約(第11条、第14条〜第23条)
  2. 独立行政法人中小企業基盤整備機構 海外ビジネスナビ「どうして、輸出で成果があがらないのか?」(引合い・オファー・ビッド、ファームオファーとサブコンオファー)
  3. ジェトロ「輸入における価格および取引条件の決定方法:日本」(貿易・投資相談Q&A、契約書・注文書に明記する事項)
  4. e-Gov法令検索「民法」(第522条・第523条・第528条)

LESSON 3-2 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。

Q1. 売り手Aが「単価10ドルで1,000個」とオファーしました。買い手Bは「単価9ドルなら1,000個買います」と返事をしました。ウィーン売買条約での扱いとして正しいものはどれですか。

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正解: 2. Bの返事はAのオファーの拒絶であり、新しいオファー(カウンターオファー)になる
代金を変える返事は、申込みの内容を実質的に変更します(第19条3項)。そのため承諾ではなく、拒絶かつ反対申込みとなります(第19条1項)。Aが9ドルを受ければ契約が成立します。

Q2. 「subject to our final confirmation」と書かれたオファーを相手が受けました。正しいものはどれですか。

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正解: 2. 売り手が最終確認して初めて契約が成立する
これはサブコンオファー(最終確認条件付き売り申込み)です。相手が受けても、売り手の最終確認があって初めて契約が成立します。相手が受ければすぐ成立するのはファームオファーです。

Q3. 買い手がカウンターオファーを出したところ、売り手は応じませんでした。そこで買い手が「やはり最初の条件で買います」と伝えました。正しいものはどれですか。

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正解: 1. 元のオファーは拒絶で効力を失っているので、それだけでは契約は成立しない
カウンターオファーは元の申込みの拒絶です(第19条1項)。拒絶の通知が届くと、撤回できない申込みでも効力を失います(第17条)。買い手の連絡は新しい申込みとなり、売り手の承諾が必要です。

レッスン3-2はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第3章 取引先探しと売買契約 のレッスン一覧
  1. 3-1取引先探しと信用調査
  2. 3-2引合いとオファー
  3. 3-3売買契約書の基本条件
  4. 3-4裏面約款と不可抗力

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