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第12章 クレームとトラブル対応 ・ レッスン12-2

紛争の解決方法。和解・調停・仲裁

読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-04

前回の復習(1分)

本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。

レッスン12-1から

Q1. 保険金を払った保険会社が、被保険者の運送人への請求権を引き継ぐことを何といいますか。

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正解: 3. 請求権代位
保険法第25条の請求権代位です。予備クレームと本クレームは、荷主が運送人に出す請求の2つの段階を指します。

レッスン11-2から

Q2. 銀行による船積書類の点検の説明として、正しいものはどれですか。

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正解: 1. 書類どうしのデータは、同一でなくても矛盾しなければよい
UCP600第14条dにより、データは同一でなくてもよいものの、矛盾してはいけません。ただしインボイスの品名は信用状と一致が必要です。銀行は書類だけを扱い、貨物は検査しません。

このレッスンの学習目標

要点

  1. 紛争解決とは、取引相手との争いを、話し合い・仲裁・訴訟のいずれかで終わらせることです。話し合いで決まらなければ、仲裁か訴訟のどちらかを選びます。
  2. 和解は当事者が互いに譲歩して争いをやめる合意です。調停は、第三者(調停人)の助けを借りて和解を目指す手続きです。
  3. 仲裁は、当事者が選んだ仲裁人の判断に従う手続きです。仲裁判断は確定判決と同じ効力を持ち、一審制で非公開です。
  4. ニューヨーク条約の締約国(2026年10月時点で172か国・地域)では、外国の仲裁判断も強制執行できます。外国の判決にはこうした多数国の条約がありません。
  5. 仲裁合意は書面でする必要があります。紛争が起きてからでは合意が難しいため、契約時に仲裁条項を入れておきます。

01紛争解決の3つの道。話し合い・仲裁・訴訟

貿易の紛争の解決方法は、話し合い、仲裁、訴訟の3つに大別されます。話し合いで解決できないときは、仲裁か訴訟のどちらかを選ぶ二者択一になります。

第12章1節で見たように、品質不良や納期遅れはまず相手との交渉で解決を図ります。ジェトロは、紛争の解決方法を話し合い、仲裁、訴訟の3つに分けて説明しています。

話し合いがまとまらないとき、次の手段は仲裁か訴訟です。同じ紛争を両方で争うことはできず、どちらかを選ぶことになります。

3つの方法の違いは、第三者がどこまで関わるかと、結論に従う義務があるかです。話し合いの結論は当事者が自分で決めます。仲裁と訴訟では、第三者が出した判断に従います。

02和解と調停。話し合いで決着させる

和解は、当事者が互いに譲歩して争いをやめる合意です。調停は、中立の調停人に間に入ってもらい、和解を目指す手続きです。結論は当事者の合意で決まり、調停人が判断を押し付けることはありません。

民法第695条は、和解を「当事者が互いに譲歩をして争いをやめることを約する」契約と定めています。英語では Amicable settlement(友好的な解決)とも言います。値引きや代品の送付で合意するのが典型です。

調停(Mediation)は、調停人という第三者が双方の話を聞き、解決策を一緒に探す手続きです。日本商事仲裁協会(JCAA)は国際商事の調停も扱っています。非公開で進み、今後の取引関係を保ちやすいことを利点に挙げています。

2018年11月には、日本初の国際調停機関として京都国際調停センター(JIMC-Kyoto)が開設されました。日本仲裁人協会が運営しています。調停は、相手が応じなければ始まらず、合意できなければ終わる点に注意が必要です。

03仲裁。仲裁人の判断に最終的に従う

仲裁とは、紛争の解決を当事者が選んだ中立の仲裁人に委ね、その判断に従う手続きです。仲裁判断は確定判決と同じ効力を持ち、控訴や上告のない一審制です。

仲裁人は、裁判官にあたる役割を担います。仲裁法第45条は、仲裁判断が確定判決と同一の効力を持つと定めています。確定判決とは、もう争えなくなった判決のことです。

JCAAは仲裁の利点として、控訴や上告がない一審制で解決が速いこと、手続きや判断が非公開であることを挙げています。訴訟は公開が原則なので、取引の秘密が外に出にくい点は大きな違いです。

仲裁判断に不服でも、上の機関でやり直しを求める制度はありません。裁判所に取消しを求められるのは、手続きに重大な欠陥があった場合など、仲裁法第44条の事由に限られます。

04訴訟の弱点とニューヨーク条約

日本の判決を外国で強制執行できる保証はありません。一方、仲裁判断はニューヨーク条約により、締約国の裁判所で強制執行を求められます。これが国際取引で仲裁が選ばれる最大の理由です。

強制執行とは、支払わない相手の財産を、裁判所の手続きで差し押さえることです。ジェトロによれば、外国判決の執行には多数の国が加わる条約がなく、各国の国内法によります。中国のように日本の判決を執行できない国もあります。

ニューヨーク条約は、正式名称を「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」といいます。UNCITRALの締約国一覧では、2026年10月時点で172か国・地域が加わっています。日本は1961年に加入しました。

取引相手の国が締約国かどうかは、契約前にUNCITRALのウェブサイトで確認できます。

05仲裁合意は書面で。仲裁機関の選び方

仲裁合意は書面でしなければなりません。紛争後の合意は難しいため、契約時に仲裁条項として定めます。仲裁機関には、JCAAのほか、ICC国際仲裁裁判所やシンガポール国際仲裁センターなどがあります。

仲裁法第13条は、仲裁合意を署名した文書や交換した書簡などの書面ですることを求めています。電子メールなどの電磁的記録も書面とみなされます。JCAAの事件では、紛争後に仲裁合意をした割合は1割にも達しません。

仲裁合意があると、相手が裁判を起こしても、被告の申立てで訴えは却下されます(仲裁法第14条)。一方的な訴訟を防げるわけです。条項の書き方は第3章4節で学びました。

ジェトロは仲裁機関の例として、JCAA、アメリカ仲裁協会、ロンドン国際仲裁裁判所などを挙げています。ICC国際仲裁裁判所、シンガポール国際仲裁センター、香港国際仲裁センターも例に含まれます。決まらなければ第三国の機関を選ぶ方法もあります。

KEYWORDSキーワード(日本語・英語)

このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。

和解Amicable settlement

当事者が互いに譲歩して、争いをやめることを約束する合意。民法第695条に定めがある。

調停Mediation

中立の調停人に間に入ってもらい、当事者の話し合いで和解を目指す手続き。結論は当事者の合意で決まる。

仲裁Arbitration

紛争の解決を当事者が選んだ仲裁人に委ね、その判断に従う手続き。一審制で非公開。

仲裁判断Arbitral award

仲裁人が下す最終的な判断。日本では確定判決と同一の効力を持つ(仲裁法第45条)。

仲裁合意Arbitration agreement

紛争の解決を仲裁人に委ね、その判断に従うという当事者の合意。書面でする必要がある。

ニューヨーク条約New York Convention

外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約。1958年採択。締約国は外国の仲裁判断を承認し執行する。

強制執行Enforcement

判決や仲裁判断に従わない相手の財産を、裁判所の手続きで差し押さえるなどして権利を実現すること。

出典

  1. ジェトロ「クレームなどの紛争解決のための仲裁」(貿易・投資相談Q&A。解決方法の3分類、仲裁の利点、仲裁機関の例、ニューヨーク条約)
  2. 日本商事仲裁協会(JCAA)「仲裁を利用するメリット」
  3. 日本商事仲裁協会(JCAA)「調停をお勧めする理由」
  4. 日本商事仲裁協会(JCAA)「調停手続の流れ」
  5. e-Gov法令検索「仲裁法」(平成15年法律第138号)第2条・第13条・第14条・第44条・第45条
  6. e-Gov法令検索「民法」第695条(和解)
  7. UNCITRAL, "Status: Convention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards (New York, 1958)"
  8. 京都国際調停センター(JIMC-Kyoto)"About JIMC-Kyoto"
  9. ICC, "ICC International Court of Arbitration"

LESSON 12-2 の仕上げ

確認クイズ(全3問)

読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。

Q1. 調停についての説明として、正しいものはどれですか。

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正解: 2. 調停人の助けを借りて話し合い、当事者の合意で解決を目指す手続きである
調停は、中立の調停人の助けを借りて当事者が話し合い、和解を目指す手続きです。結論は当事者の合意で決まります。JCAAの調停は非公開で進みます。

Q2. 日本の輸出者が、未払いの代金を海外の買い手から確実に回収したいと考えています。紛争解決の方法を仲裁にしておく理由として、最も適切なものはどれですか。

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正解: 1. 仲裁判断は、ニューヨーク条約の締約国の裁判所を通じて強制執行を求められるから
仲裁判断は、ニューヨーク条約により締約国の裁判所で強制執行を求められます。外国判決には同様の多数国条約がありません。仲裁は一審制で、手続きは非公開です。

Q3. 日本の仲裁法における仲裁合意について、正しいものはどれですか。

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正解: 3. 書面でする必要があり、電子メールなどの電磁的記録も書面とみなされる
仲裁法第13条は、仲裁合意を書面でするよう求め、電磁的記録も書面とみなしています。将来の紛争についても合意でき、契約時の仲裁条項が一般的です。

レッスン12-2はここまでです

クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。

第12章 クレームとトラブル対応 のレッスン一覧
  1. 12-13つのクレーム
  2. 12-2和解・調停・仲裁

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