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第12章 クレームとトラブル対応 ・ レッスン12-1貿易クレーム・運送クレーム・保険クレームの違い
読む時間の目安: 5分 ・ 公開日 2026-10-04
前回の復習(1分)
本文に入る前に、前のレッスンの内容を思い出してみましょう。
Q1. NACCSで輸入申告をするとき、インボイスの扱いとして正しいものはどれですか。
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正解: 1. 申告添付登録(MSX)業務で、PDFファイルとして提出できる
インボイスなどの通関書類は、MSX業務でPDFファイルとして提出できます。ただし、1つの申告で電子と紙の提出をまぜることはできません。
Q2. 1箱あたり正味重量20kgの商品を、1箱あたり2kgの梱包材で梱包し、10箱出荷します。総重量の合計はいくらですか(説明のための例です)。
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正解: 1. 220kg
総重量は、梱包材などを含めた合計の重さです。1箱あたり20kg+2kg=22kgで、10箱なので220kgです。200kgは正味重量の合計です。
このレッスンの学習目標
- 貿易クレーム・運送クレーム・保険クレームを、請求する相手と原因で区別できる
- 国際海上物品運送法の通知のルールと、運送人の責任が消える1年の期間を説明できる
- 貨物の損傷や不足を見つけたときに、記録・通知・証拠の保全の順で動ける
要点
- 貿易クレームとは、売買契約の相手に対して、品質不良や数量不足、代金の不払いなどの対応や賠償を求めることです。
- 輸送中の破損や不足は、運送人への運送クレームになります。貨物保険の対象になる事故なら、保険会社に保険クレームを出します。
- 国際海上物品運送法では、損傷は受取の際に書面で通知します。すぐに発見できない損傷は、受取の日から3日以内の通知で足ります。
- 運送人の責任は、引渡しから1年以内に裁判上の請求をしないと消滅します。
- 損傷を見つけたら、受取書類に事故摘要を書いてもらい、写真を残し、運送人と保険会社にすぐ知らせます。
013つのクレームの違い。請求する相手で分ける
貿易クレームは売主・買主の間、運送クレームは運送人、保険クレームは保険会社に出す請求です。損害の原因によって請求先が変わります。
クレーム(claim)とは、相手に損害の賠償や対応を求めることです。貿易では、請求する相手によって3つに分けて考えます。
このレッスンでは、日本のC社が海外のD社から食器を輸入した例で考えます。コンテナを開けると、割れた食器と、足りない箱が見つかったとします。
割れた原因が輸送中の事故なら、運送人への運送クレームです。保険の対象になる事故なら、保険会社に保険クレームを出します。一方、コンテナの封印(シール)に異常がないのに、中身が足りないこともあります。ジェトロは、これは「不積み」と判断され、売主に求償が必要だと説明しています。これは貿易クレームです。
02貿易クレーム。売買契約の相手に出す請求
貿易クレームとは、売買契約の相手に出す請求です。買主からは品質不良・数量不足・船積みの遅れ、売主からは代金の不払いが主な原因になります。
ウィーン売買条約では、売主は契約どおりの数量・品質・種類の物品を引き渡します(第35条)。引渡しの時期も契約に従います(第33条)。買主は代金を支払い、物品を受け取ります(第53条)。
相手がこうした義務を果たさないと、損害賠償などを求めることができます(第45条・第61条)。品質不良や数量不足は買主から売主へ、代金の不払いは売主から買主へのクレームになります。
買主は、実行できる限り短い期間内に物品を検査しなければなりません。運送を伴う契約では、仕向地に着くまで検査を延ばせます(第38条)。売主への通知の期限は、レッスン2-4で学んだ第39条のとおりです。
03運送クレーム。運送人への通知と1年の期間
運送クレームとは、輸送中の破損や不足について運送人に出す請求です。損傷は受取の際に書面で通知し、引渡しから1年以内に裁判上の請求をしないと責任が消滅します。
国際海上物品運送法第7条では、荷受人は受取の際に、損傷などの概況を運送人に書面で通知します。すぐに発見できない損傷は、受取の日から3日以内に通知すれば足ります。
通知がないと、貨物は損傷なく引き渡されたものと推定されます。また、運送人の責任は、引渡しから1年以内に裁判上の請求がないと消滅します。これは同法第15条により適用される商法第585条の定めです。
ジェトロによると、船会社への請求は2段階で行います。まず事故通知(Notice of Damage)を出し、これを予備クレームといいます。次に損害額を計算して、正式な本クレームを出します。
04保険クレーム。保険会社への事故通知と書類
保険クレームとは、貨物保険をかけた保険会社に保険金を請求することです。事故を知ったらすぐ保険会社に連絡し、案内された書類を提出します。
保険法は、損害が生じたことを知ったら、遅滞なく保険会社に通知するよう定めています(第14条)。日本損害保険協会も、事故はできるだけ早く連絡するよう案内しています。
その後、保険会社から必要な書類の案内があります。協会は、保険金請求書、事故を証明する書類、損害の状況がわかる写真などを例に挙げています。貨物保険では、保険証券も保険金請求の際に出す重要な書類です。
保険会社は損害を調査し、専門の調査会社に任せることもあります。保険金を払った保険会社は、運送人などへの請求権を引き継ぎます(保険法第25条)。これを請求権代位といいます。保険のしくみは第9章で学びます。
05損傷を見つけたら。記録・通知・証拠の保全
損傷や不足を見つけたら、受取書類に記録を残し、運送人と保険会社にすぐ知らせ、証拠を保全します。この記録が、後で損害を立証する材料になります。
ジェトロによると、運送人に賠償を求めるには、荷主が損害を立証する必要があります。LCL貨物では、引渡しの際に損傷が見つかれば、貨物引渡証に事故摘要(Remarks)を書いてもらいます。
FCL貨物では、コンテナを受け渡す際に機器受渡証が発行されます。ここにコンテナの穴やへこみが書かれていれば、船積時の無故障船荷証券とあわせて、運送中の損傷を示す材料になります。
損傷した貨物やコンテナの写真も残しましょう。損害額を客観的に示すため、海事検定人(サーベイヤー)に鑑定を頼み、鑑定書を得ることもあります。運送人への通知では、たとえば "Five cartons arrived broken." のように事実を短く書きます。
KEYWORDSキーワード(日本語・英語)
このレッスンで覚えておきたい用語です。貿易の書類や契約は英語が中心なので、英語名も一緒に覚えましょう。
売買契約の相手に出す請求。品質不良、数量不足、船積みの遅れ、代金の不払いなどが原因になる。
輸送中の破損や不足について、運送人に損害の賠償を求める請求。
貨物保険をかけた保険会社に、保険金の支払いを求める請求。
損傷を見つけたときに、正式な請求に先立って運送人に出す通知。
損害額を計算し、書類を添えて運送人に出す正式な損害賠償請求。
引渡しの際に見つかった損傷や不足を、貨物引渡証などに書き込んだもの。損害を立証する材料になる。
貨物の損害を鑑定する専門家と、その鑑定結果をまとめた書類。
保険金を払った保険会社が、被保険者が持つ運送人などへの請求権を引き継ぐこと。
出典
- e-Gov法令検索「国際海上物品運送法」(第7条 荷受人等の通知義務、第15条 商法の適用)
- e-Gov法令検索「商法」(第585条 運送人の責任の消滅)
- e-Gov法令検索「保険法」(第14条 損害発生の通知、第25条 請求権代位)
- ジェトロ 貿易・投資相談Q&A「貨物保険をかけ忘れた場合の船会社への損害賠償請求」
- ジェトロ 貿易・投資相談Q&A「輸入者側で貨物の保険を手配する際の留意点:日本」(コンテナ内の数量不足と不積み)
- ジェトロ 貿易・投資相談Q&A「インシュアランス・ポリシーについて:日本」
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 共通 Ⅴ.保険金の請求について」(保険金請求手続きの流れ・必要書類)
- UNCITRAL「これからの国際商取引法―UNCITRAL作成文書の条文対訳」8. 国際物品売買契約に関する国際連合条約(第33条・第35条・第38条・第45条・第53条・第61条)
LESSON 12-1 の仕上げ
確認クイズ(全3問)
読んだ直後に思い出すと、記憶に残りやすくなります。選択肢をタップして答えてください。
Q1. コンテナの封印に異常がないのに、中の箱が足りませんでした。ジェトロの説明では、誰に求償する必要がありますか。
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正解: 2. 売主(サプライヤー)
封印に異常がないコンテナ内の数量不足は「不積み」と判断され、売主に求償する必要があります。売買契約の相手に出すので、貿易クレームにあたります。
Q2. 国際海上物品運送法で、すぐに発見できない損傷を運送人に通知する期限はどれですか。
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正解: 1. 受取の日から3日以内
損傷は受取の際に書面で通知するのが原則で、すぐに発見できない損傷は受取の日から3日以内の通知で足ります。1年は、裁判上の請求をしないと運送人の責任が消滅する期間です。
Q3. 保険金を払った保険会社が、被保険者の運送人への請求権を引き継ぐことを何といいますか。
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正解: 3. 請求権代位
保険法第25条の請求権代位です。予備クレームと本クレームは、荷主が運送人に出す請求の2つの段階を指します。
レッスン12-1はここまでです
クイズで迷った問題があれば、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。